内容説明
『ヴィクトリア朝時代のインターネット』著者、もうひとつの傑作。18世紀のウィーンにチェスを指す自動人形(オートマトン)が現れた。あまりに優れた性能のためたちまちヨーロッパ中で話題になるが、その真相は?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こまごめ
17
元祖チェス指し人形タークを巡る数奇な運命。元々はマリア・テレジアを喜ばせるためにケンペリンという役人が作り上げたからくり人形(オートマトン)だったが、からくり人形のしくみを誰も説明出来ずにヨーロッパ各地でチェスを指す興行を行い大盛況だったそうです。2024/11/18
Cinita
15
かつて欧米に旋風を巻き起こしたチェスを指し自動人形「ターク」のノンフィクション。18世紀当時の自動人形ブームから蒸気機関への技術史も面白いし、巡業の過程でバベッジに「知性を持った機械」というビジョンを与え、ポーに「魅力的な謎」と「手がかりから論理的に真相を導く」思考を与えたというのもロマンがある。終盤、どのように機械に知性の存在を認めるのか、知性とはいったい何なのか? といったところにまで踏み込んでいくのも、歴史がAI黎明期の現在に接続されるようで非常にワクワクしました。名著。2025/01/24
緋莢
15
1769年。ハンガリーの文官であるヴォルフガング・フォン・ケンペレンは、フランス人奇術師の舞台を見たことが きっかけで、チェスを指す人形を作ることになった。その人形は歴史上最も有名なオートマトンになり ベンジャミン・フランクリン、エカテリーナ大帝、ナポレオン・ボナパルト、チャールズ・バベッジ、エドガー・アラン・ポーらとの接点を持って…『ヴィクトリア時代のインターネット』著者の作品ということで、手に取りました。 (続く2024/12/05
garth
10
ジーン・ウルフの「素晴らしき真鍮自動チェス機械」(若島正編『モーフィー時計の午前零時』所収)を訳させていただいた手前、読まないわけにはいかず。2025/01/11
sataka
6
タイトルに興味を惹かれていたので文庫化を機に購入。18世紀に機械がチェスを指せるはずもないので、技術ではなく奇術の範疇というオチは予想できた。タークの80年強の軌跡を辿りつつ、当時の人々の仮説を退けていくことで、徐々に真相に迫っていく構成はミステリ的で流麗。そうでなくても、膨大な資料に基づいたオートマトン史として読んでも面白かった。ラストで現代のAIに話を繋げるのは強引さを感じたが、それはご愛敬か。2024/12/04