内容説明
アルコール依存症、離婚を経て、取り組んだ断酒。自分の弱さを無視して「何者か」になろうとするより、生活を見つめなおし、トルストイとフィッシュマンズなどに打ちのめされながらも、すでにあるものを感じ取るほうが人生を豊かにできると確信する。様々な文学作品を引きながら、日常の風景と感情の機微を鮮やかに言葉にする。新たに3篇を加え増補新版として文庫化。
目次
1章 ぼくは強くなれなかった/打算的な優しさと「〇を作る理論」/「何者か」になりたい夜を抱きしめて/僕は強くなれなかった/ありのままの世界/平熱のまま、この世界に熱狂したい/2章 わからないことだらけの/世界で生きている/朝顔が恋しているのは誰?/不快だけど大切なことを教えてくれた作品/私はそうは思いません/35歳問題/わからないことだらけの世界で生きている/3章 弱き者たちのパレード/二瓶さんとの雅な蹴鞠/舌の根が乾かないおじさん/ヤブさん、原始的で狂おしい残念な魅力/紳士は華麗にオナラする/肉と人と醜いアヒルの子/中田英寿に似た男/4章 弱くある贅沢/「細マッチョ」をめぐる冒険/クローゼットの中の時間/弱くある贅沢/僕の好きだった先輩/補章 川下への眼/一生懸命で寂しい人/八〇〇回目くらいの話/川下への眼/あとがき/文庫版あとがき/飄然と、弱い自分を語ることから始める 山本貴光/全身随筆家 吉川浩満
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
52
本書は宮崎さんのエッセイになる。宮崎さんは過去に離婚経験があり、そしてアルコール依存症になり、そこから復帰された方。そんな宮崎さんが描くのは「弱さ」。様々な角度から「弱さ」について語っている。思うことは文章が優しいという所。強くて正しい言葉がずらって並んでいるような文章ではなく、優しくて言葉を探り探り選んだ文章になっている。その文章が読んでいてとても心地よい。例えるなら博多のやわいおうどんを食べたときの感覚に似ている。疲れたときにあの味とやわさを味わうと癒されますよね!それと似ている😊2025/05/26
いっち
39
ゼロを作る理論が良かった。荷物を持つとき、5対5でつらさを分配するより、10対0で一人を楽させる考えだ。他にも、車の同乗者が疲れてるなら運転手以外は寝てよかったり、自分の仕事が終わったなら残業せずに帰ってよかったりも、この理論に該当する。「誰かがつらい思いをしているとき、みんながみんな同じようにつらくならなければいけない、といった空気が日本にはある」と著者は言う。確かにそうだと思った。ゼロを作れる何かを持つことが重要だろう。ゼロを作れる何かがあれば、つらいときは誰かに頼りやすいし、自分もゼロになりやすい。2025/02/05
里愛乍
36
はじめましての作家さん。筆者の半生も含めて日常を綴るエッセイ集。タイトルからも分かるように、言葉の運びが実に巧み。強くはない(自称)でも優しいそんな彼の持論には共感を覚えるものも多々あった。また、好きな作家や読みたいと思ってる作品からの引用も嬉しい。とりあえず、近いうちに川端康成は読みたいと思った。2025/11/27
阿部義彦
34
ちくま文庫、6月の新刊。初めて知る著者。題名と表紙に惹かれて、そして裏見返しの紹介文にフィッシュマンズが。文芸評論家と有ります。私より20年下の世代ですが、良かったです。巻頭の0(ゼロ)を作る理論からして、新鮮で、他人を思いやる優しい人なんだと思った。酒と煙草に溺れる日々から、煙草を辞め、膵臓炎にかかり酒を辞め、一度離婚を経験し文字通りゼロになりましたね。3章「弱き者たちのパレード」が特に響いた。吉田修一さんが好きだからのこの題名かな?編集者に、拍手。弱者に焦点を当ててかつ笑わせる。ヤブイヌ最高!2024/06/30
Porco
24
本年最も惹かれた書題。「平熱のままこの世界に熱狂していたい」そのまま受け取るとそんな無茶なことを…とは思うが、この言葉を知ってたまに考えるにつれ座右の銘にしたいくらい惹かれてしまった。当事者として向き合うにはそれ相応こちらの熱も必要であるが、一定温度の温度に達すると視野狭窄に陥りむしろ見失ってしまう。といって、理性的に見るために距離を置くとそれはそれで見えないものも出てくる。あるがままを楽しむには平熱でありつつ熱狂するという、光と闇を行ったり来たりできるやつが1番強い理論を実践することが肝心なのだ。2024/10/26
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