内容説明
貨幣の価値は一定であると我々は常識的に考えている.しかし,複数の通貨が存在して評価が多元的であるという事例は,歴史上,さまざまな地域,時代にあった.交換という行い自体が多様である以上,貨幣も多様にならざるを得ない――.謎に満ちた貨幣現象を,世界史の中で根本から問い直す.
目次
序 章 貨幣の非対称性
1 合算できない貨幣たち/2 手渡される貨幣の論理/3 還らない貨幣/4 多元的貨幣論へ
第一章 越境する回路――紅海のマリア・テレジア銀貨
1 マリア・テレジア銀貨の謎/2 英仏伊白による鋳造競争/3 銀貨流通の実態/4 回路としての貨幣/5 マリア・テレジア銀貨が語る貨幣論
第二章 貨幣システムの世界史
1 見えざる合意/2 地域流動性と支払協同体/3 銅貨の世界と金銀貨の世界――手交貨幣の二極面/4 分水嶺としての一三世紀/5 本位貨幣制と世界経済システム
第三章 競存する貨幣たち―― 一八世紀末ベンガル,そして中国
1 錯綜する貨幣/2 超零細額面貨幣,貝貨の世界/3 競存する銀貨/4 市場の重層性と通貨の競存/5 銀流入はインド・中国に何をもたらしたのか
第四章 中国貨幣の世界――画一性と多様性の均衡構造
1 時代を超越する枠組――「土銭」・「郷価」の世界/2 銅銭経済の論理/3 二つの紙製通貨――鈔と票/4 上下「不」通の構造――秤量銀制度創出の動機/5 自律的個別性と他律的画一性
第五章 海を越えた銅銭――環シナ海銭貨共同体とその解体
1 ジャワの万暦通宝/2 中国における基準銭/3 中世日本における基準銭の形成とその消失/4 中世日本における銭貨流通の特質/5 東南アジアにおける銭貨流通/6 環シナ海銭貨共同体の遠近
第六章 社会制度,市場,そして貨幣――地域流動性の比較史
1 貨幣と制度的枠組/2 自己組織化された地域流動性――伝統中国における小農と市場町/3 地域流動性の他律的調整――絶対王政期以前の西欧/4 地域流動性の座標/5 地域的信用と地方銀行/6 伝統市場の四類型
第七章 本位制の勝利――埋没する地域流動性
1 一国一通貨原則の歴史性/2 小農経済と在来通貨の変容/3 紙幣と兌換性/4 脱現地通貨化と恐慌
終 章 市場の非対称性
1 貨幣需要の季節性と通貨の非還流性/2 「財の交換」と「時の交換」/3 市場階層の不整合/4 市場の水平的連鎖と垂直的統合
補 論 東アジア貨幣史の中の中世後期日本
1 常識の非「常識」/2 明代私鋳の北宋銭,開元銭,そして永楽銭/3 階層化する環シナ海の銭貨――悪貨は良貨を駆逐せず/4 分岐する近世東アジア
あとがき
増補新版あとがき
岩波現代文庫版あとがき
注
参考文献
感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
さとうしん
記憶喪失した男
ゲオルギオ・ハーン
ta_chanko
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