岩波新書<br> 象徴天皇の実像 「昭和天皇拝謁記」を読む

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岩波新書
象徴天皇の実像 「昭和天皇拝謁記」を読む

  • 著者名:原武史【著】
  • 価格 ¥1,056(本体¥960)
  • 岩波書店(2024/10発売)
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  • ISBN:9784004320388

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内容説明

昭和天皇と側近たちとの詳細なやり取りを記録した「昭和天皇拝謁記」.貴重な史料からは,政局や社会情勢,戦争やについて饒舌に語る昭和天皇の等身大の姿が浮かび上がる.歴史上はじめて象徴天皇となった人物の言動とは,いったいどのようなものだったのか.私たちにとって「象徴」とは何なのか.第一人者による天皇論.

目次

序 章 『昭和天皇拝謁記』とは何か
あらわになった昭和天皇の肉声
「拝謁記」が書かれた時期
『拝謁記』の読みどころ
本書の構成
第1章 天皇観
退位もあり得ると考えていた
退位しないと再び立場を変える
「おことば」での決意表明
過剰な警備に対する批判
巡幸と一般参賀
天皇の象徴観
教育勅語はあったほうがよい
第2章 政治・軍事観
天皇の民主主義観
政党政治に対する不信感
保守政党の大同団結を提言
社会党右派への期待
議席ゼロになっても安心できない共産党
後期水戸学のキリスト教認識との類似点
朝鮮人学校はつぶした方がいい
再軍備は絶対に必要
第3章 戦前・戦中観
時勢には逆らえない
張作霖爆殺事件と満州事変
二・二六事件の忌まわしい記憶
日中戦争と太平洋戦争
米軍は空襲の標的を定めていた
条約の信義を重んじたから戦争終結が遅れた
ソ連参戦が戦争を終わらせた
第4章 国土観
どこまでが日本の範囲か
北海道に対する認識
九州に対する認識
沖縄に対する認識
内灘や浅間山を米軍に提供すべき
第5章 外国観
米国の評価すべき点
米国の批判すべき点
天皇の英国観
天皇のソ連観
天皇の中国観
天皇の朝鮮半島観
第6章 人物観1――皇太后節子
意見が違う
「虫の居所」によって違ったことを言う
時流におもね,話し上手を好む
皇太后が見た天皇
怖くて宮中服の廃止を言えない
蚕糸業視察はやめてほしい
大正天皇との仲が悪かった
皇太后の遺書の謎1――「家宝」とは何か
皇太后の遺書の謎2――秩父宮への言及と一〇月二二日という日付
ケガレに厳格
第7章 人物観2――他の皇族や天皇
皇后をどう見ていたか
皇太子明仁に対する不安
秩父宮に対しては同情的
戦後も終わらない高松宮との対立
三笠宮は我がままに育った
正仁親王がキリスト教の信仰をもってもよい
少ない明治天皇と大正天皇への言及
第8章 人物観3――政治家・学者など
マッカーサーとの会見
吉田茂に対する相反する感情
鳩山一郎と岸信介に対する批判
近衛文麿よりも東条英機を評価
南原繁・清水幾太郎・平泉澄への否定的な評価
第9章 神道・宗教観
皇大神宮のアマテラスによる「神罰」
「祖宗と万姓に愧ぢる」
宮中祭祀は宗教でないが宗教性はある
明治神宮と靖国神社
キリスト教への改宗の可能性
「御寺では礼拝はせぬ」
第10章 空間認識
皇居は移転せず,御文庫をそのまま使う
皇居前広場を活用すべき
赤坂御用地と新宿御苑
那須御用邸・沼津御用邸・葉山御用邸
軽井沢と箱根
東京大学・京都大学・結核療養所
お召列車という空間
終 章 『拝謁記』から浮かび上がる天皇と宮中
天皇は何を信じていたのか
イデオロギーとしての「反共」
関連資料から浮かび上がる一九六〇年代の宮中
昭和天皇が残した「負の遺産」
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

125
主権者から象徴へ立場は一変したが、昭和天皇の頭の中は戦前のままだったようだ。再軍備の必要性認識や共産党の危険視は過剰に過ぎるし、中国や朝鮮についても明治時代の観点を改めていない。一方で弟の秩父宮を偏愛した貞明皇太后との確執は深刻なレベルで、おしどり夫婦と思われていた大正天皇と皇太后の仲が悪かったなど歴史の常識を覆す話もある。高松宮・三笠宮への評価も厳しく、宮中で孤立する天皇の姿が見えてくる。時代の激変下で周囲の無理解を嘆きながら、日本を守らんと孤軍奮闘する理知的だが不器用な君王像は憐れにすら思えてしまう。2025/02/02

ぐうぐう

31
『昭和天皇実録』とは異なり、心を許していた宮内庁長官・田島道治とのやりとりを記録した『昭和天皇拝謁記』は、俗っぽい昭和天皇の一面を垣間見ることができる。そもそも天皇でなくとも本音は俗っぽさを招くものだ。俗っぽいという表現が適切でなければ、人間臭さと言い換えてもいい。また、いつまでも戦前を引き摺っているかのような感覚や、皇后に対する植物学的発言など、人間臭さとは別の意外な姿を何度も目にしてしまう。自身の象徴という立場について深く考えることがなかったのも、一瞬意外ではあるが、(つづく)2024/12/26

Tomoichi

27
この著者の天皇観とは相いれない事は知っていたが、読友さんのレビューにつられて購入(笑)テーマ別にまとめてくれているので読みやすい構成になっているが、いちいち著者の個人的な感想にゲンナリさせられる。やっぱり「昭和天皇拝謁記」を買って読むしかないか。この著者の「大正天皇」も彼の天皇観がうざくてまだ本棚で眠っているが、どうしたものか。2025/02/09

内藤銀ねず

24
原武史さんの昭和天皇関連本、2冊め。NHKの特設サイトでも大きく扱われている、田島道治『拝謁記』を原さんが読み解いたもの。もともと『拝謁記』じたい生前本人が公表を渋っていたくらいの大発見ですが、原さんの手に掛かると貴重な感じがない。戦後すぐの混乱期、新憲法のアレコレで政府も皇室も暗中模索なのに、令和の価値観でそれを俯瞰している観が否めない。原さんの自説である、貞明皇后と昭和天皇の確執が裏付けられたことを中心に「な、前に言った通りだろ?」と答え合わせを読者に求められた気分。ちょっと期待はずれ。2024/12/24

22
天皇って言っても人間なんだから、下々と同じでそら色々あるし大変だし、死んでから日記全部読まれるのかわいそうだよな~という感想がまず。…読んでしまってすいません。反共反ソがすごいのと、おたあさまがとっても苦手で、沼津の御用邸に空襲があったのは、戦争遂行派だったおたあさまに打撃を与えるためではないかと推測してたのはなかなか…。「近衛は数字がわからぬ。数字の説明を東条がすると眠っているやふな事がある」笑ってもうた…。2025/02/23

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