岩波新書<br> 昭和問答

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岩波新書
昭和問答

  • ISBN:9784004320395

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内容説明

昭和は,今この瞬間の私たちの立っている時空につながる.なぜ競争から降りられないのか,国にとっての独立・自立とは何か,人間にとっての自立とは何か.これらの難問に答えるべく,明治・大正から平成までを縦横に語りつつ,各々が昭和を知るための本も紹介する.好評『日本問答』『江戸問答』に続く第三弾.

目次

1 戦争が準備されていた
昭和を問答するための問題提起
戦争のための大義──一国の独立
「日鮮同祖論」の問題
近世日本人の地政学的センス
国のかたちと、国家のあり方
民権運動と国民が戦争を煽った
満鉄経営と日韓併合
第一次世界大戦で得たもの
間接統治にこだわるわけ
日本の権力システムの不思議
2 二つの戦争
日中戦争への道程
黄禍論が吹き荒れた
戦争の動機をつくるための戦闘
抬頭する共産主義
迷走する日本と毛沢東の戦術
日本軍に欠けていたもの
フィードバックなき戦争
3 占領日本が失ったもの
GHQ占領と一億総懺悔
東京裁判をどうみるか
原爆の資料館に足りないもの
占領政策の転換と反共の砦
憲法制定力と政治思想
三島由紀夫が抱えそこねた昭和
4 生い立ちのなかの昭和
敗戦後の東京・京都の風景
日本の選択への違和感
テレビも給食もアメリカさん
戦争体験から受け取るもの
安保闘争とのかかわり
七〇年安保の行方と万博
「あいだ」を編集するための「遊」
不確定性の科学に学ぶ
昭和が終わってしまう前に
土俗日本とポップ日本
フランス文学から江戸文学へ
日本文化は閃光のように
5 本を通して昭和を読む
昭和を知るための本
雑誌も本も読んでいた
別世界としての小説
同時代の体験を読む
日本のナショナリティを読むための本
日本の科学者たちの思索と情緒
言葉の場所としての共同体
石牟礼道子の言葉
昭和は「祈り」と「憧れ」を失った
梁石日が描いたもの
6 昭和に欠かせない見解
昭和の闇を読み解く
日本の古層を再生した折口
コミューンをめざしたウーマンリブ
ハードボイルドとニヒルの系譜
日本のニヒルと時代小説
石川淳と中村真一郎の読み方
島田雅彦の自由について
全知全能の神と天皇
関係性のなかでの「自立」
「虚に居て実をおこなふべし」
関係のなかでしか生きられない
名づけようのない色
「いないいない・ばあ」でいく
「世界たち」のために対話をする
あとがき1 ともにとびらをあけてきた(田中優子)
あとがき2 ゴジラが上陸するまで(松岡正剛)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

115
問答シリーズは田中優子、松岡重剛の重層的な知識と分析力が冴え渡ったテーマ深掘り対談の典型であり、明治以降に走りながら近代国家建設に邁進した果てに辿り着いた昭和日本の姿を浮き彫りにする。発展を急ぎ過ぎた日本人は長期的な視野に立って政治や軍事の構想を練ることを忘れてしまい、その場しのぎを繰り返した末に敗戦を迎えた。あまりに徹底的に負けたため、今度は他国に任せられることは任せてしまう態度が現れ、戦後昭和は違和感だらけになってしまったのだ。虚実が混淆し明確な色のない日本の未来に関し、もう1冊語り合ってほしかった。2024/12/25

trazom

105
序盤にある戦争へと向かう歴史に関する二人の対話は、刺激的な指摘は少なく、納得感はあれど常識的でちょっと期待外れ。中盤の文化史的な部分に入って、二人の思いが交錯する。松岡さんがプリゴジン博士の影響を受けて寺田寅彦・岡潔・岡倉天心的な情緒を語り、田中先生は「豊饒の海」を批判する。「昭和とは「祈り」を奪われたまま未だに取り戻せてない」と言う松岡さんに、田中先生が「本来、文学は「祈り」を含むもの」と応対する。終盤で、二人が推薦する「昭和を知るための本」55冊がリストアップされる。読まねばならない本が、また増えた。2025/02/26

KAZOO

87
今までに「日本問答」「江戸問答」と田中さんと8月にお亡くなりになった松岡さんの掛け合い対談を興味を持って読ませてもらいましたが、今回の「昭和問答」が一番印象に残りました。というのは、やはり読書家のお二人が昭和を生きてこられて身をもってこの時代を体験されているからだという気がし田野と私に年代が近いということもあったのだという気がします。特に「生い立ちの中の昭和」「本を通して昭和を読む」が印象に残りました。お二人がご自分の生活してきた昭和についての本などについての感想が楽しめました。2024/10/28

阿部義彦

20
岩波新書、10月18日第一刷発行。過去に同じ面子による対談「日本問答」「江戸問答」も出しており、其方も読みたいと思います。その第三弾でしたが、正剛さんの肺癌の治療による、中断もあり本書が出るのにはかなりの時間を要しました、その後の展開も話してはいたのですが、残念ながら本書の後書きを脱稿した直後に呼吸困難に陥り8月12日に救急搬送された病院で急逝しました。お二人の本を巡るやり取り、半分も理解出来てないかも知りませんが、萩尾望都、つげ義春、ゴジラまでが話題に登場、大藪春彦、島田雅彦に関しては興味深かったです。2024/11/18

なおこっか

9
未知は過去の中にあり、と教えてくれた恩師が田中優子先生である。本書の主題は近い過去であるのに、知らないことが多い昭和。特に日本が戦争当事者であったことは避けては通れない。私自身、アジア圏での当時の情勢をあまりに知らないと、突き付けられる思いだ。日本被団協の方々のノーベル平和賞受賞についてもそうだが、無知の過去を教えてくれる方のいる有り難さよ。知る機会は貴重。本書の対談時期、恐らく体調が万全ではなかったのであろう松岡正剛氏がかなり聞き役にまわっているが、編集だけでなく聞き手としての力量が伺える。2024/11/16

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