内容説明
一九七八年、久保田悦子はアルバイト先のスナックで、杉千佳代と出会った。舞台女優を目指す千佳代は所属する劇団で、『アナベル・リイ』のアナベル役を代理で演じるが、その演技はあまりに酷く、惨憺たるものだった。やがて、友人となった悦子に、千佳代は強く心を寄せてくる。フリーライターである飯沼と入籍し、役者の夢を諦めた千佳代は、とても幸せそうだった。だが、ある日店で顔面蒼白となり倒れ、ひと月も経たぬうちに他界してしまった。やがて、悦子が飯沼への恋心を解き放つと、千佳代の亡霊が現れるようになる。恋が進展し、幸せな日々が戻って来る予感が増すにつれて、千佳代の亡霊は色濃く、恐ろしく、悦子らの前に立ち現れるようになり――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
銀華
6
天真爛漫を体現した女優に懐かれるように友となった主人公は支配欲を擽られながらも仲を深める、そんな彼女がモテる夫に愛されたまま亡くなり、それから白い彼女の影が見え始めーー姿が見え隠れする彼女が何をしたいのか分からず、存在を感じさせるだけなのに、夫の縁のある女が衰弱する様を近くで見ることになる。彼女の心の真相も明かされず恐怖も含め困惑戸惑いを感じる日常を交えた主人公の回顧録で進む本書で彼女は『アナベル・リイ』になれたのが嬉しかったのかなと思う。あの時失敗した憧れの詩、それも友の手によって書かれたのだから。2024/11/14
かに丸
1
親友の亡霊に悩まされる主人公の回顧録の体で進む物語。親友千佳代が何を想い主人公やその周囲の人物に死後もまとわりつくのか。物語のラスト彼女が愉しげであったのは、親友が自分のことを書いてくれてただ嬉しかったのではないかとぼんやりと思った。東えりかの文庫版解説も含めて完成された物語だと感じた。2024/11/11
TB
0
★★★☆☆ 天衣無縫な友人=千佳代と知り合ったことで、数奇な人生を送ることになった主人公の悦子の手記という形で語られる作品。 小池真理子の新作だというのであらすじも知らずに読み始めたらホラー作品だと知りビビった。というのも昔々読んだ小池真理子のホラーが無茶苦茶怖くて夜トイレに行けなかったほど。それ以来小池真理子のホラーは敬遠していたから。 でもこれはそこまで怖くなかった。 オチが予測とちがったので、何故?が残った。 2024/11/25