内容説明
浮世絵、洒落本、狂歌。江戸文化の要には一人の大編集者がいた。
2025年大河ドラマ主人公の巨大な足跡と、江戸の思考法を描く。
2025年大河ドラマ『べらぼう』の主人公は、蔦屋重三郎。
花の吉原振り出しに
才人鬼才をより集め
幕府に財産取られても
歌麿写楽をプロデュース
この蔦重こそ、数多くの洒落本、黄表紙、狂歌を世に出し、
歌麿、写楽を売り出した江戸最大のプロデューサーだった。
その華麗な人脈は太田南畝、山東京伝、恋川春町、酒井抱一、
市川團十郎、葛飾北斎、曲亭馬琴、十返舎一九とまさに江戸文化そのもの。
江戸文化とは何か、文化を創り出すとはどういうことか。
豊富な図版を入口に、人を編集し、
文化を織り上げた、蔦重の「たくらみ」に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
289
敬愛する田中優子先生が語る蔦屋重三郎。「編集」をコードに彼の事績を読み解いて行く。蔦屋重三郎の名での刊行は吉原細見『籬の花』が最初であった。この吉原をめぐる出版は、たくさんの出版人や文化人が蠢いていた。筆頭は福内鬼外(=風来山人、こと平賀源内)だろうか。ちなみに彼自身はゲイだったのだが。さて、蔦屋重三郎の一番の功績は何だろうか。実はこれが一番とは言えないほどに江戸文化への貢献は大きいのである。歌麿を売り出したこと、写楽を発掘して一世を風靡したこと、馬琴と十辺舎一九を世に送り出したこと…。まだまだあるのだ。2025/07/18
パトラッシュ
146
文化とは才能を発掘し世に出す目利きがいてこそ、時代を風靡する現象にまで発展する。通常は文学や絵画、演劇など各分野別にプロデューサー的存在がいるが、江戸後期に蔦屋重三郎はあらゆるジャンルで売れっ子を見つける才に恵まれていた。吉原の女たちをアートの力で劇場化し、恋川春町や山東京伝に洒落本を書かせ、歌麿や写楽に浮世絵を描かせた。無論そこには売れるものを欲した出版業者の顔もあったが、当時の庶民が求めるものを察知し商品化する高い能力あればこそだった。蔦重がいなければ、江戸文化は実につまらないものになっていただろう。2024/12/19
tulip
40
戦争は無く平和な江戸時代。しかし、火災、震災、飢饉で社会は不安定で人々に気持ちは鬱々としてしまう。そこを蔦重は日常生活の中で『別世』をヴィジュアルで見せ、人の気持ちを盛り上げる。歌麿を育て、写楽は働かせ過ぎてしまい、北斎の役者絵は見限る。次々に作品を世に送り出したが47歳で脚気により没す。それにしても、江戸文化について知って欲しいという著者の熱意は充分に伝わるが、新書という形態で思った以上の細かな情報が満載であっぷあっぷ。本当はハードカバーで出したかったのでは、と思ってしまった。2025/03/08
shikashika555
39
大河ドラマの主人公について知りたいと、平積みから手に取る。 きっと東京に住んでいたらもっと興味を持ったことだろう。 上方文化の模倣ではなく江戸オリジナルの文化をつくりあげることに大きく寄与した編集者かつ出版社長。 その出自からドラマ要素満載である。 本書は蔦屋重三郎の編集者としての側面を軸に、江戸中期の政治との関係を説明している。 読了後は狂歌や芝居役者絵に興味が出てきた。2025/01/22
エドワード
31
江戸時代は「役割社会」である。男性が作った秩序と価値観の内部で、男の役割と女の役割が明確に区別され、その役割を果たすことで社会から賞賛される構造だ。吉原も歌舞伎も蔦屋重三郎もその枠組から逃れられない。その枠組しか知らず、そこで生きるしかない。幕府は世界を管理する。吉原も蔦屋の処罰もその一環にすぎない。その幕府が250年の平和を築く。絵画の技術は進歩し、世界初のカラー印刷-複製としての浮世絵―を産みだす。吉原は平安以来の日本文化を継承する。江戸の町に複製画の消費者が育つ。江戸を知り尽くす田中先生、お見事。2025/05/08
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