内容説明
音のない世界でも、きっとメッセージは届くから──ろう理容師を祖父に持つ若手作家。その半生を描こうとする姿が胸に迫る傑作小説!
日本の聾学校ではじめてできた理髪科を卒業した第一号であり、自分の店を持った最初の人。そんな祖父を持つ五森つばめは、3年前に恋愛小説系の文学賞を受賞してデビューした。だが、その後自分の目標を見失い、2作目が書けないでいた。そんな折、デビューしたところとは違う出版社の編集者から声を掛けられ、祖父の話を書くことを強く勧められる……。ろうの祖父母と、コーダの父と伯母、そしてコーダの娘の自分、さらには聾学校の先生まで。三代にわたる希望をつなぐ取材が始まった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
234
一色 さゆり、4作目です。 著者の新境地にて私小説?、題材的には感動作に成り得たと思うのですが、不完全燃焼でした。残念。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003980402024/11/28
あすなろ@no book, no life.
144
お祖父様は日本の聾学校で初めて出来た理髪科を卒業した一期生で、自分の店を持った初めての人。そんな書き出しから始まる本作。今はコーダ等と言われているが所謂聾唖の歴史がここには余す事無く描かれている。僕は知らない事だらけであった。視覚障害は人と物の間を隔て、聴覚障害は人と人の間を隔てる障害である、と作中に記される。正にその歴史を余す事無く描いている。優生保護法や準禁治産等、そしてそれらが生み出された過去の世間を我々は知る必要があるのだが、それらが良く分かる。そしてそれらは歴史という程古式騒然した話ではない。2025/07/20
fwhd8325
141
聾唖の世界は丸山正樹さんの作品がありますが、一色さんのこの作品は、聾唖の世界を通して、自分自身に問いかけている物語でした。少し角度が違うことで、読者である私には、とても新鮮に感じました。差別の歴史も含めて、もっと多くの方にこの世界を知ってもらいたい気持ちです。2024/12/28
モルク
139
塾講師の五森つばめは小説で新人賞を受賞したが、それから3年新作を書くことができなかった。そんな中編集者の助言でろうあ理容師だった祖父のことを小説にしようと調べはじめる。聾唖の両親を持つコーダである父、叔母、小さい頃怖がって近寄らなかった祖母のもとを訪れ、取材を通じ祖父母の強い信念に触れつばめ自身自分と向き合おうとする。聾唖者だけではなく障害を持っている人を蔑み差別していた時代。平気で差別用語が使われるなか祖父正一の苦労、その信念の強さに頭が下がる。決して同情ではなく涙が溢れた。大きな学びを得た一冊だった。2025/11/13
となりのトウシロウ
129
新人賞をとり作家デビューした五森つばめ。3年間新作を書けないままだったが、新しい編集者に背中を押され、自分の祖父母がろうで理髪店をやっていたのを題材にすべく自らの家族を調べる。ろうである祖父母の間に生まれた伯母や父、聞こえない人と聞こえる人、それぞれが抱える想いが伝えられない歯痒さ、悲しさ、切なさを感じた。ろうは言語的マイノリティであってコミュニケーションの方法が言語ではないという考えに自身の偏見的な見方に気付かされる。誰かに伝えたいという気持ちを決して諦めずにつなげていくことが書かれた作品です。2025/06/15




