内容説明
横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込んだ。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。ボナパルト王女も身に着けた25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は失踪してしまう……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
R
238
物語全体が演出になっていて面白かった。やたらセリフ臭い言葉と仰仰しい行動で、脚本を読んでるみたいな小説だったのだが、それもまた一種の演出であったと最後に明かされて、なるほどと叙述トリックでもないけど感心した。最終的にはまるでSFのような展開になったけど、そこも含めて描こうとしたものがタイトルの通りであったのかもしれないと、その機微情動のすべてが実態とは異なる形で描写されていたと思うと非常に面白く、よく伝わったと言いたくなる本だった。2025/03/01
旅するランナー
230
罪名、面白いっす。吉田修一初の孤島を舞台した推理小説かと思いきや、歴史の重みを感じる人間ドラマと、空想科学小説的雰囲気を絡ませてきます。こんな愛の形もあるんでしょう。2024/12/15
のぶ
202
吉田さんの新刊は驚いたことに本格ミステリーだった。「一万年愛す」という謎めいた宝石とそれを探す任務を負った探偵。いきなり島から姿を消す老人。迷宮入りした四十年前の主婦失踪事件と謎めいた展開に読む手が止まらなかった。どこかユーモラスな内容と読みやすい文体が深刻さを排除するが、真相が明らかになるにつれ、この小説のテーマが見えてくる。最後までとても凝った構成で、何重にも楽しめる作品だった。人の隠された暗い過去の真相を知った時、人はなぜこれほどに感傷的になるのだろう。感動しました。2024/11/08
タツ フカガワ
190
かつてデパート王と呼ばれた梅田壮吾の米寿の祝いに「一万年愛す」と名付けられた時価35億円のルビーを探して欲しいと梅田家から依頼を受けた探偵遠苅田と、45年前の主婦失踪事件で知り合った担当警部坂巻が招かれ、長崎県九十九島にあるプライベート・アイランド野良島を訪れる。和やかなうちに祝宴は終わるが、その夜壮吾が姿を消す。壮吾の波乱の人生を振り返りながら行方を探る展開は、まるでアガサ・クリスティーを読むような趣向。それが終盤切ない愛の物語に一変する。これが吉田流どんでん返しか? 読み始めたら止まらない小説でした。2025/02/24
hirokun
186
★4 芥川賞受賞作家の吉田修一さんの先入観で読み始めると、些か調子が狂うかもしれないが、私は純文学は得意でないため極めて読み易い作品だった。推理小説のジャンルで捉えても、前半は少し軽い感じがする展開であるが、終盤は第二次大戦直後の上の周辺を舞台に生きる戦争孤児を描き、戦場のみならず、戦後においても継続する戦争の惨禍を表現しこの作品のテーマとしているように感じた。世界各地で起きている戦争、紛争の惨たらしさは,戦後においても継続することを思い出させてくれた。世界情勢がますます緊迫化する中でこそ、受け止めたい。2024/11/08
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