内容説明
動けなくなった家族は、誰が看るのですか? 自宅火災の跡から殺害された家族三人の遺体が出た。唯一生き残った長女は典型的なヤングケアラーだった。少子高齢化、認知症、貧困、格差、少年犯罪、教育――。日本が抱える問題は、すべて家族の問題につながっていく。いずれ誰もが直面する現実を描く問題作!
雑誌記者の笹山真由美は、若年性アルツハイマーを発症した父に付き添い病院を訪れた。彼女はその病院のICUで、頭に包帯が巻かれ、複数の管につながれた意識のない少女・美咲が流す涙を目撃する。美咲の家族は殺害され、自宅火災の焼け跡から遺体で発見されていた。事件を調べ始めた真由美は、美咲が典型的なヤングケアラーだったことを知る。重度の障害者の兄と認知症の祖母の面倒を、看護師の母にかわって一人で看ていた美咲が、衝動的に家族を殺して放火したと考える警察の見解に違和感を覚えた真由美が突き詰めた衝撃の真実とは……?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
74
火災現場から裸足で逃げた19歳の女性・美咲。焼け跡から遺体で発見されたのは美咲の母・祖母・そして重度障害者の兄。美咲は小学生の時から祖母と共に兄の介護を担い、中学生になると頼みの祖母も認知症に。母は一家を養うため看護師として働き、兄と祖母の介護は美咲がほぼひとりで担うようになる。警察は美咲が3人を殺害し家に火を放ったと考えるが、雑誌記者の真由美は美咲が家族を殺すとは思えず一家の事情を調べてゆく。ヤングケアラーの抱える問題と真由美自身の父の認知症の問題。国、行政がこの問題に真摯に取り組んで欲しいものだ。2025/03/17
イケメンつんちゃ
57
高嶋哲夫 前に読んだ気があるようなないような テロリストか台風かみたいなタッチ 推理小説のイメージがなかったので斬新 単行本を読んでみました 飛龍十番勝負 第六十六弾 今回は 高嶋哲夫先生 ありがとうございます バーテンダーさんの 感想コメントに思わず感銘 たいへん遅くなりましたが やっと手元に たいへん面白かったです この頃流行りの女の子 このシチュエーションは 僕は好きです 向こうからやって来る 不幸の連鎖 野生のエルザ なんか騙されてはいけない 常識とか偏見とか 方向性は変わる 1996年のマリリン2025/05/01
hirokun
54
★3 高嶋哲夫さんは好きな作家さんの一人。今回の作品は、ヤングケアラーに焦点を当て、この問題は少子高齢化・認知症・格差社会・少年犯罪などが相互に絡み合って発生している問題であり、今後ますます増加していくことに警鐘を鳴らしている。物語は、雑誌記者に事件の背景を丁寧に調査させる一見ノンフィクション作品の形態をとっている。このことが問題の真相により真実味を与えている。少子高齢社会に起因する様々な問題にどのような優先順位をつけ、施策を打っていくかは、昨今話題の103万の壁よりずっと重大な問題。2024/11/22
rosetta
38
★★★★☆切なく苦しく考えさせられ、それでも家族の繋がりの美しさを強く覚える小説だった。ヤングケアラーの問題。少子高齢化を防ぐ、或いはせめて遅らせる方法は?政治家だけでなく全員が自分に何が出来るか向き合わなければならない問題である。前作があるのだろうか主人公が警察に激しく反感を持っていて、またマスコミとして独善的で図々しいのが共感出来なかったが、物語の質を下げるものではない。交通事故で寝たきりの兄を10年、介護が必要になった祖母を5年見てきた19歳の少女が家族を殺して放火したとされるが本人も意識不明…2025/03/26
レア
27
少子高齢化、認知症、貧困、格差、少年犯罪、教育─日本が抱える問題は、すべて家族の問題につながっていく…確かに。ヤングケアラーも聞き慣れた言葉になってきたし、これからますます問題になっていくだろう事をてんこ盛りに詰め込んであって、大事な事なんだけどちょっと詰め込みすぎてひとつひとつが浅くなってしまった感じがもったいない。これらの問題は家族の問題なのかもしれないけど、国の問題でもある。政府にはもう少し真剣に危機感を持って早急に対策してほしいな。2025/01/29