内容説明
日本を“奪回”するために戦う
テロリストたちの冒険譚(エンターテインメント)
戦後日本が抱え込んでいるトラウマである「アメリカの属国」という屈辱的なステイタスから身をふりほどき、
国家主権の回復、「自由日本」の創建をめざして戦うテロリストたちの冒険譚なんですから、痛快でないはずがない。
(略)今の日本人にもっとも必要なのは秩序を紊乱することができるほどの想像力の暴走である。
島田さんはそう考えてこの小説を書いた。(内田 樹「解説」より)
世直しか、テロリズムか?
壮大な政治冒険小説。
父の復讐のためCIAエージェントになった男は、日米両政府の表と裏を巧みに欺き「その時」が訪れるのを待つ。
親友のヤクザ二代目、聖母のごとき介護ヘルパー、ホームレス詩人、告発者、大物フィクサーらが集い引き起こされるのは世直しか、テロリズムか?
いざ、サーカスの幕が上がる。壮大な政治冒険小説(エンターテインメント)。
目次
第一部
1 スクールデイズ
2 花咲く乙女たちの陰で
3 CIAと私
4 放蕩息子の帰還
5 信仰と懺悔
6 モグラ探し
7 口寄せ
8 面従腹背
9 J1とJ2
10 笛吹きを守れ
第二部
11 サーカス開幕
12 イソノミア
13 強制送還
14 自由日本
15 地獄の季節
16 大きな政治的勝利の物語
17 密航と密謀
18 奉仕と反逆
19 私を信じる者は死なない
20 忠実な裏切り者
21 スクラップ・アンド・ビルド
22 寝返りと聖体拝領
23 エピローグ
解説 内田 樹
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sam
50
愚民政策の比喩としての「パンとサーカス」(=「食料と娯楽」)。腑抜けた国民を目覚めさせ、アメリカに隷属する政府を体制変革するために立ち上がるテロリストたちを描く。メッセージ性の強い作品だが娯楽作品として十分楽しめる。ストーリーとしては生煮えでリアルさを欠くところはあるけれどもその分は多彩な登場人物たちが補っている印象。詩人(黄昏太郎)と巫女(桜田マリア)がいい。この2人が出会うところから幕が開き、あとは怒涛の展開で一気読み。2025/02/19
さぜん
41
700pの大作。壮大な政治冒険小説はフィクションの力を持って、現代社会の闇を暴き読者に喝を入れる。戦後から今に至るまでアメリカの属国に甘んじ、私利私欲にまみれた政治家達。日米地位協定が日本を守るわけではない。CIAエージェントの寵児、ヤクザの二代目の空也と妹のマリア。彼等が企むのは世直しというテロリズム。手に汗握る展開に読む手は止まらず。先の衆院選を予言するかのような記述に驚き、決して絵空事ではないと確信する。そろそろ私達も想像力を暴走させてみようではないか。2024/12/27
Sakie
11
日本人は自国の革命を想像する義務がある、と思った。大災害でも感染症でも日本は変わらなかった。政治に関心を持って選挙に行く正しき行為の先にも日本の完全主権は無い。革命とはテロや暗殺そのものではあり得ない。どうすれば変わる。自由と平等は要求し、戦わなければ、永遠に手に入れられないもの。『死ぬ前にド派手なサーカス見せろ、思う存分、社会を引っ掻き回せ』。テロの場面で鼓動が早まった。加害への恐怖半分、変革への期待半分。著者は憤りを金言と風刺と皮肉に込め、畳みかける。これは、読者へのアジテーションだ。胸が騒いだ。2025/03/20
naotan
8
第1部で挫折しました。次の本へ。2024/12/02
amanon
4
文庫版にて再読。解説で内田樹もエピローグについて軽く触れていたが、最後の最後に至る寸前でこんな展開が待ち受けていたということに驚き。また、初読の際には、米国の脅威ばかりが印象に残っていたが、実はそれと同じくらいに中国が大きな存在であったということに虚をつかれた思いがした。この二大大国との間に立って、いかにうまくその場を切り抜け、なおかつ自立国家としての矜持を保つかが、今後の日本の課題なのだとは思うけれど、それをうまくやり通せるだけの力を持った政治家が今の日本には望めそうにないと思うと、深い嘆息しかない。2024/10/31