内容説明
モデルベースドアプローチと異なり,データを直接用いて制御器を設計・更新・調整する方法はデータ駆動制御と呼ばれる。モデリングが困難な状況で操業データを有効に使いコストダウンを実現する方法論を整理・体系化した入門書。
目次
1. データ駆動制御とは
1.1 入口としての例題
1.2 なぜデータを直接用いる制御が必要か
1.3 データ駆動制御の立ち場
1.3.1 データから直接制御器をつくる
1.3.2 データから直接制御器を更新する
1.4 古くからあるデータ駆動制御とそれらの問題点
1.5 本書を通じて考える問題
1.5.1 目標応答への追従問題
1.5.2 目標応答を完全に実現する理想の制御器
1.5.3 安定性について
1.6 本書の構成とガイド
1.6.1 各章の概要
1.6.2 本書の読み方のガイド
1.7 本書を通じて注意すべき点
1.7.1 連続時間表記と離散時間表記について
1.7.2 表記について
2. Iterative Feedback Tuning(IFT)
2.1 IFTの基本的な考え方
2.1.1 データを直接用いた素直な最適化
2.1.2 入力のペナルティ
2.1.3 制御器のパラメータ微分
2.2 実験によるIFTの検証
3. Fictitious Reference Iterative Tuning(FRIT)
3.1 FRITの概要
3.2 FRITの基本的な考え方
3.2.1 擬似参照信号の意味と役割
3.2.2 J_F(ρ)の最小化の直感的な説明
3.2.3 J_F(ρ)の最小化の意義
3.3 FRITにおける非線形最適化計算
3.4 FRITの適用例
3.5 いくつかの注意
3.5.1 制御器の逆システム
3.5.2 雑音の影響
3.5.3 入力項のペナルティ
3.6 さまざまな立場からのFRITの解釈
3.6.1 制御器の立場からの評価関数J_F(ρ)の解釈
3.6.2 モデリングの立場からの評価関数J_F(ρ)の解釈
4. Virtual Reference Feedback Tuning(VRFT)
4.1 VRFTの概要
4.2 VRFTの基本的な考え方
4.2.1 仮想参照信号の意味と役割
4.2.2 J_V(ρ)の最小化の直感的な説明
4.2.3 J_V(ρ)の最小化の意義
4.3 VRFTにおける最小二乗法
4.4 VRFTにおける最適性を保証するためのプレフィルタ
4.5 FRITへの最小二乗法アプローチとプレフィルタ
4.5.1 最小二乗法によるFRIT
4.5.2 FRITにおける最適性を保証するためのプレフィルタ
4.5.3 PI制御器へのFRITの最小二乗法アプローチ
4.6 FRITとVRFTの比較
4.6.1 完全な目標応答追従が実現される場合
4.6.2 ループ特性の比較
4.6.3 プレフィルタの比較
5. さまざまな制御系に対するデータ駆動制御
5.1 FRITとVRFTの拡張の基本的な考え方
5.2 比例微分先行型PID制御に対するFRIT
5.3 カスケード制御に対するFRIT
5.4 内部モデル制御(IMC)に対するFRITとその応用
5.4.1 IMCに対するFRITの適用
5.4.2 IMCにおけるモデルと制御の同時更新
5.4.3 スミス補償器におけるモデルと制御器の同時更新
5.4.4 非最小位相系への拡張-最小位相部と非最小位相部の直列結合表現
5.4.5 非最小位相系への拡張-安定な伝達関数の比の表現
5.5 二自由度制御系に対するFRIT
5.5.1 基本的な考え方
5.5.2 非最小位相系・むだ時間系への拡張
5.6 FRITとVRFTを併用した二自由度制御器の更新
6. 現代制御におけるデータ駆動制御
6.1 状態フィードバックによるレギュレーション問題
6.1.1 考える問題
6.1.2 基本的な考え方
6.1.3 評価関数の意味
6.1.4 最小二乗法による求解
6.2 状態フィードバックによる積分型サーボ系
6.2.1 積分型サーボ系の構成
6.2.2 考える問題
6.2.3 制御器周りの擬似参照信号を構成するアプローチ
6.2.4 最小二乗法による計算
6.3 オブザーバを併合した積分型サーボ系
6.3.1 考える問題
6.3.2 FRITによるアプローチ
6.3.3 FRITによるオブザーバに内包されたモデルの改善
7. データ駆動予測とその応用
7.1 データ駆動予測
7.1.1 なぜデータ駆動予測が必要か
7.1.2 考える問題
7.2 FRITを用いたデータ駆動予測
7.3 状態フィードバック制御系に対するデータ駆動予測
7.4 データ駆動予測による目標応答更新
7.4.1 考える問題
7.4.2 データ駆動制御とデータ駆動予測による入力予測
7.4.3 入力制約を考慮した目標応答の更新
7.5 データ駆動予測による一回の実験データのみで可能なIFT
8. Estimated Response Iterative Tuning(ERIT)
8.1 二自由度制御系のデータ駆動予測
8.2 ERITの考え方
8.2.1 予測応答と目標応答の差の最小化
8.2.2 ERITの評価関数の考察
8.2.3 ERITと二自由度制御系に対するFRITとの比較
8.2.4 いくつかの拡張
8.3 目標応答更新を伴うERIT
付録
A.1 本書で必要とする数学的基礎
A.2 本書中に出てきた証明,およびいくつかの補足
引用・参考文献
索引