内容説明
これはオーレリーの18歳から20歳までの悪戦苦闘の記録。優秀な成績で大学に入った彼女を待っていたのは、平等とは名ばかりの階級社会が押しつけてくる、平板で息もできない退屈の日々だった。メディアが報じない現代フランス社会の現実に肉薄するデビュー作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
41
暗鬱感、閉塞感を醸し出すためか、全編に渡ってRadioheadの楽曲が登場する。Thom Yorke来日公演の予習としてBGMで聴きながら読んでいたためとても驚いた。特に”How to Disappear Completely”は正にその曲を聴いているときだっため目を疑った程だ。フランスの社会的成層システム、「花の都パリ」の生々しい実態を克明に描き出した鋭利な秀作である。ラストの一文はここ一年で読んだ小説のなかでも際立ってショッキング。彼ら(我々)が住んでいるのは窒息の街か。窒息の国か。窒息の世界か。2024/10/13
本の蟲
15
優秀な成績で進学するも、思い描いていたキャンパスライフとは程遠い孤独な生活を送っていた大学生オードリー。コロンビア出身の留学生アレハンブロとの恋に慰めを見出すが、彼もまた未来への展望を見出せずにいて…。別れたあと再会したパリでの生活は一層息苦しく…。日本でも地方と首都圏での格差。高学歴でも少ない機会にワーキングプアと同様の問題あり。しかし例え建前でも「職業に貴賤なし」。マックジョブ(誰でもできる仕事)だろうと蔑むのは品がないという意識がある。あからさまに職に対する差別がある欧米での、若者の焦燥感と絶望感よ2025/02/27
練りようかん
14
貧しさから抜け出したいフランス人女性と、自国では恵まれていたが勉学のため渡仏したコロンビア人男性。大学に入学し思っていたのとは違う現実に気づくのだが、もっと貧しくなってるかもしれないと思う女性と、故郷は貧しかったんだと思う男性の認識の反転が対照的で面白い。俯瞰してみれば両者上にはいけない固定された社会階層にいるが、視点を低くすれば変動はあり、愛という感情と経済危機が頭の中の余裕に影響する様を実に丁寧に描いていた。恋人関係に孤独はずっとあって文化的生活が抜け落ちるのが興味深い。タミル人の嘆きが胸を突いた。2025/07/05
沙羅双樹
13
確かに面白かったが、帯文から変に期待しすぎたためか、凄まじく来るとまではいかなかった。ただ、刺さるところは思いっきり刺さった。たとえば人物描写がミシェルより上手かったところ。今後の活躍が楽しみなフランス文学のルーキー2024/10/21
フランソワーズ
11
ここで描かれるのは性差別とか人種差別とは異なる、閉塞した社会が生み出す格差。オーレリーにしろ、アレハンドロにしろ、それらと格闘しながらも浮き上がる糸口さえ見つけられない。そんな窒息した世の唯一の愉しみは、パーティと酒とセックス。愛さえも消費である。オーレリーとアレハンドロとの仲も、結局はこの社会で埋もれてしまう。別れたけど、孕った彼女は産み育てるという道を選ばない。この小説ではその選択は安易な決断になるからだろう。→2025/04/06
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