内容説明
廃止予定の宇宙停留所には家族の星へ帰るため長年出航を待つ老婆がいた……少数者に寄り添う心温まる未来を描く短篇集、文庫化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やも
70
今の世界をベースに新しい世界に連れて行ってもらった。科学を極めたらそこに行けそうな気がしてくる。天才の発想する浪漫。最っっっ高です。読み終えた今、早くも著者の他の話が読みたくてたまらない。▶選別主義を極めた科学者とその子孫▶宇宙で行方不明になって40年後に帰ってきた祖母▶ある風景を描き続けた少女、彼女が描いていた場所が見つかったがそこは…▶故郷になっていたかもしれない惑星行きの宇宙船を待つ老婆。▶感情が物質になって死んだ人の感情にまた会うことが出来るならば?▶宇宙船搭乗前に逃げ出して海に飛び込んだ理由。2024/12/01
NAO
56
韓国の名門理工大学在学中に書かれたデビュー作を含む、作者のデビュー作品集。「始まりの地」に巡礼に行った者たちの半数が帰ってこないことに疑問を持った少女がとった行動を描いた「巡礼者たちはなぜ帰らない」、宇宙に出たまま数十年行方不明になっていた祖母の不思議な体験を描いた「スペクトラム」、表題作「わたしたちが光の速さで進めないなら」など。宇宙や異星人を題材に、作者は女性や切り捨てられた者たちを描き、彼女たちに毅然とした態度を取らせている。表紙絵はライトノベルのようだが、考えさせられることの多い話ばかりだった。2025/01/01
azukinako
36
思い込みから主人公を男性だと思って読んでいると途中であ、女性だと気づく。 ふと安堵する。こういう読み方は危険だけれど主人公が女性だということでSFだけれど深く共感しわくわくする。 「スペクトラム」のルイのいる星の話が好きだ。2025/01/05
Shun
31
韓国のSF作家によるSF短編集。韓国文学におけるSF作品は初めて読みます。その中でも本作は若い世代による作品ということで、現代の韓国文学の流れを感じさせる作品集です。女性が主人公の作品が多く、また母や祖母といった家族との繋がりを描く作風が特徴か。それでいて科学的素養がなくては書けないであろう独創的な世界設定がそれらの作品の土台を作り物語には温かさが、そしてしっかりSF作品と主張できる内容でした。なんと言っても表題作の言葉が胸に響く。広大な宇宙で時代から取り残された者の哀愁が味わい深い良い作品だった。2024/11/02
柊渚
23
それは遠い未来の誰かの寂しさや孤独。取り零されたその断片をそっとかき集めて、やさしく包んでくれるような、どこか切なく心温まるSF短篇集。たしかにわたしたちは光の速さでは進めないけれど、言葉は光よりも早く胸の奥を照らす。またとても好きな作家さんに出会えてしまって、すごく幸せ。どのお話ももはや好き、、としか言えないのですが、『共生仮説』は一番印象深く…。目にしたはずのないものや景色に感じる懐かしさと恋しさ、私自身抱いたことのある感情のような気がして。キム・チョヨプさん、他の作品も読んでいきたいです…!♡2024/11/08