内容説明
イスラエルとはどのような国家なのか.その行動原理は.パレスチナ自治区でジェノサイドを続けているのは「ユダヤ人国家」を僭称する植民地主義のシオニストたちである.暴力を禁じるユダヤ教の伝統にとってイスラエルは,救済の途上の障害以外の何ものでもない――.在カナダの碩学のユダヤ教徒による渾身の批判,緊急出版.
目次
日本語版への序文
シオニストによる植民地化前夜のパレスチナ
パレスチナ人に対するシオニスト国家の態度
ユダヤ教の拒絶と新しい人間の形成
ヨーロッパの遺産――暴力と無力
一〇月七日の攻撃に至るまで
復讐とイスラエルの存続
ダビデとゴリアテ,そしてサムソン――地獄に堕ちるのか?
あとがき
参照文献/訳注/訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
144
2024年 こういうの読むと、マスコミ報道はイスラエル寄りに偏向してるな、と。 ユダヤ教とシオニズム、ユダヤ人とイスラエル人を混同してはいけない2025/03/02
どんぐり
87
ガザの軍事侵略を続けるイスラエル国家を批判するユダヤ人の歴史学者による岩波ブックレット。国境などまったくお構いなしに軍事的征服と植民地化を繰り返すイスラエルの軍隊。ガザは廃墟と化し、イスラエルとパレスチナの二国家解決は遠のくばかりである。イスラエルが戦争国家となった事の起こりはどこから始まったのか。この小冊子では、ヨーロッパの悲劇の記憶が、シオニストの大義に都合よく、ユダヤ人を動員する道具になってしまったことを解説してくれる。→2025/04/05
ネギっ子gen
59
【大勢のユダヤ人はシオニズムを拒絶し、ラビや知識人たちは「ユダヤ人国家」という思想そのものを断罪した】。ユダヤ人の歴史家が、「ユダヤ人国家」イスラエルの正体を暴き、徹底批判する書。巻末に参照文献と訳注。原書・訳書共に2024年刊。「日本語版への序文」で、<シオニストの夢は一貫して、相互の尊重に基づく共存と平和を求めることよりも、パレスチナ人をまるごと厄介払いすることでした。11カ月近くもの間、世界が見ているにもかかわらず、イスラエル軍は何十万人もの民間人を、殺害し、障害者にし、飢餓に晒しています>と――⇒2025/03/09
がらくたどん
56
特別なアンテナを立てる事もなく暮らしてきた私はゴラン高原で起きている夥しい女性と子供の死に関してイスラエルの声しか聞いていなかった事に少し前から大きな不安を感じていた。20世紀までにユダヤ人が被った多大な被害と21世紀にその災禍の記憶を保存する事に熱心な「ユダヤの国」が継続している私の眼には「加害的」に映る行動が繋がらなくなってしまったのだ。欧米という立派な拡声器を通して聴こえるイスラエルの声以外の小さな声を聴いてみたくなった。本書はソ連で生まれカナダで伝統的ユダヤ教様式で暮らすユダヤ人科学者の声である。2025/04/22
Nobuko Hashimoto
28
イスラエルがパレスチナで起こしていることは植民地主義によるものであり、本来のユダヤ教の教えに基づくものではない、むしろ反する思想や行動であると断じる本。レニングラード包囲との対比もあり。読み飛ばすことのできない濃い内容で、たいへん勉強になった。2025/01/11