生成AI時代の言語論

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生成AI時代の言語論

  • ISBN:9784865284348

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内容説明

「ChatGPTは、人間に匹敵する知性を備えているのだろうか?と、問うこと自体が、ナンセンスである。」

AI研究、認知科学、心理学、言語学の領域を横断。
生成AIによって見えてきた、人間の言語の謎にせまる。

◆対談「生成AIとはなにか?」
AI研究者・松尾豊氏に、ChatGPTを中心とした生成AI研究の現状を聞く。「生成AIの発展によってブルシット・ジョブが増える?」「人間の自由意志は幻想?」
AIによって人間や社会はどのように変化していくのか、AI研究の最先端を追う。

◆鼎談「記号接地する」とはどういうことか?
『言語の本質』(2023年新書大賞受賞)の著者・今井むつみ氏、秋田喜美氏をむかえ、AI研究の重要問題である「記号接地問題」について議論。
オノマトペと言語習得にはじまり、音楽の効用、アブダクション、信仰と「知」の関係性まで縦横無尽に語る。

◆大澤真幸 AIについての論文4本を収録
・ある意味での「資本主義の終焉」
・生成 が人間に近づいている?  いやそうではなく......
・表象能力の非表象的基礎
・人類的コモンズの提唱

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夜間飛行

188
社会に大きな影響を及ぼす生成AIが特定企業の管理下にあるのは心配だし、AIそのものにも様々な脅威が考えられる。本書は、問題点も含めてAIの可能性を探りつつ、人間の知について語っている。焦点の一つは記号接地問題だ。AIの思考は対象に接地せず、記号空間の中にある。例えばChatGPTが海と言っても、一度も海を見たり、思い浮かべたことはなく、記号として使っているだけだ。一方、人の知は記号空間の外に空想などの〝余剰〟を伴わずにいない。それは軀があるからだ。AIの進歩と並行して、人の知とは何かが問われるべきだろう。2024/10/14

ころこ

40
少し前に出版されたムックが手に入らない現状に生成AIに対する関心の高さを感じる。前半にベストセラーになった『言語の本質』の著者今井・秋田両氏と大澤との鼎談がある。以前読んだ『言語の本質』をちゃんと読んでいなかったのだなと再確認させられた。上手く要約されているため、『言語の本質』の確認、再発見に有効だ。さらに大澤からこの問題への理解が深まる問いの提示がある。人間とチンパンジーの比較実験から、それぞれ〈意味→記号〉と〈記号→意味〉をどの様なプロセスで行っているのか検討するのだが、『言語の本質』でアブダクション2025/01/29

タイコウチ

10
今井・秋田両氏との鼎談は『言語の本質』のまとめみたいなものかと侮っていたら、チンパンジーのアイの言語習得(の挫折)とサックスの「妻と帽子を間違えた男」が関連づけられ、対称性推論をめぐる「記号接地問題」の捉え直しから勢いがつき、後半の大澤氏単独の論文では、オースティン/サールの言語行為論とトマセロの「共同注意」を援用し、人間だけが言語を使って他者を共同注意に巻き込もうとするという言語の本質と起源をめぐる刺激的な議論が展開される。生成AIを人類のコモンズにという「共産主義宣言」まで全部咀嚼するには時間が必要。2024/12/15

ossan12345

8
求心化/遠心化作用はイマイチよくわからなかったが、全体に基本的には分かり易く生成AIや記号接地について述べられていた。松尾、今井、秋田各氏との対談・鼎談は、今を時めく話題の学者たちの意見とあってワクワクしながら読めた。それにしても、資本主義がデジタル封建主義に堕しているというのは同意できるが、だからといって生成AIを人類のコモンズ、共有物にしよう、というのは実現可能な具体策が思いつかない。自分自身すっかりデジタル農奴として、批判的精神を失ってしまったようだ。2025/03/11

izw

8
松尾豊との対談、『言語の本質』の著者である今井むつみ・秋田喜美との鼎談の後、大澤の小論2編、論文2編が続く。松尾との対談は何かすれ違い感があるという気がした。論文を読むと大澤は、生成AIが個人の自由な思考、自由な判断、自由な意思決定について脅威となる、言語と思考をめぐる人間の経験の最も良質な部分を毀損するかもしれない、考えていることが分かり、対談でもその危機感を強調しているためかと思った。今井・秋田の鼎談から言語の成り立ちを通じて、記号接地問題について深く考察され、本質がちょっぴり見えた気がする。2025/02/15

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