傷痍軍人と文学の日本近代

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傷痍軍人と文学の日本近代

  • 著者名:市川遥
  • 価格 ¥3,960(本体¥3,600)
  • 青弓社(2024/09発売)
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  • ISBN:9784787292773

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内容説明

戦争によって傷ついた兵士や軍人である傷痍軍人を、文学はどのように描いてきたのか。作品は傷痍軍人をいかに語り、読者にどのように読まれてきたのか。

日清・日露戦争を起点に、アジア太平洋戦争、そして戦後までを対象にして、傷痍軍人を描く文学の歴史的な見取り図を提示する。具体的には、山田美妙や江戸川乱歩、井伏鱒二、直井潔たちの文学作品のほか、美談集や童話、文芸作品集などを取り上げ、新聞や雑誌などのマスメディアでの議論も肉付けして、傷痍軍人表象の変遷を跡づける。

当初は戦争での傷病による苦しみを抱えた人々として、アジア太平洋戦争期には「傷」を抱えるヒーローとして、戦後には様々な戦争の記憶と交差しながら反戦を体現する存在として、様々に描かれた傷痍軍人の表象から、彼らを取り巻く時代の諸相や力学を浮き彫りにして、戦争と文学の緊張関係に迫る。

目次

はじめに

序 章 「傷痍軍人」とは誰か
 1 傷痍軍人に関する先行研究概観
 2 文学のなかの傷痍軍人表象
 3 傷痍軍人の傷と時間

第1部 忘れられた傷――「傷痍軍人」前史と文学

第1章 文学が描いた傷と戦争へのまなざし――日清戦争後の負傷兵言説と山田美妙「負傷兵」
 1 日清戦争の負傷兵
 2 文学のなかの負傷兵
 3 「負傷兵」が描いたもの
 4 「負傷兵」の位置づけ

第2章 「癈兵小説群」を立ち上げる――江口渙「中尉と癈兵」を中心に
 1 癈兵小説の特徴とその展開
 2 「中尉と癈兵」のなかの癈兵表象
 3 身体感覚と描かれる「揺らぎ」

第3章 「幻」が描く悲劇と抵抗――江戸川乱歩「芋虫」をめぐって
 1 過剰な「称揚」
 2 奪われた「声」
 3 芋虫の「幻」

第2部 集められる傷――戦時下の傷痍軍人表象

第4章 大衆作家たちの「潤色執筆」――『傷痍軍人成功美談集』の成立と「再起奉公」言説をめぐって
 1 成功美談とは何か
 2 「再起奉公」とその裏側
 3 『美談集』成立とその背景
 4 「潤色執筆」をめぐって

第5章 「傷」を描くということ――一九四〇年前後の軍人援護強化キャンペーンと傷痍軍人表象をめぐって
 1 「強化キャンペーン」と子どもたち
 2 童話による傷痍軍人との出会い
 3 『軍人援護文芸作品集』をめぐって
 4 英雄視を拒む語り

第3部 重なる傷――戦後の語りをめぐって

第6章 傷つけられる兵士たち――文学のなかの兵役忌避の物語から
 1 疾病作為という手段とその結末
 2 私的制裁と兵士たちの身体
 3 書く行為の明示と「集団」のなかの忌避者

第7章 戦争の経験を引きずる――井伏鱒二「遥拝隊長」と傷痍軍人表象からみる戦後  
 1 同時代の傷痍軍人イメージ
 2 「気違ひ」と〈未復員〉
 3 負傷する足と「びつこ」
 4 「びつこ」と引きずる足

第8章 「傷跡」と語りの変容――直井潔の作品とケアの様相をめぐって
 1 作家・直井潔
 2 依存とケアの文脈から
 3 多様なケアをめぐって
 4 戦争の傷跡を語り直す

終 章 「傷痍軍人」はどのように語られてきたのか

初出一覧

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