講談社文庫<br> ポトスライムの舟

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講談社文庫
ポトスライムの舟

  • 著者名:津村記久子【著】
  • 価格 ¥605(本体¥550)
  • 講談社(2024/09発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062769297

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内容説明

芥川賞受賞作
29歳、社会人8年目、手取り年収163万円。
こんな生き方、働き方もある。新しい“脱力系”勤労小説

29歳、工場勤務のナガセは、食い扶持のために、「時間を金で売る」虚しさをやり過ごす日々。ある日、自分の年収と世界一周旅行の費用が同じ一六三万円で、一年分の勤務時間を「世界一周という行為にも換金できる」と気付くが――。ユーモラスで抑制された文章が胸に迫り、働くことを肯定したくなる芥川賞受賞作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

zero1

383
自分の労働はいくら?現代を鋭く切り取った芥川賞受賞作を再読。29歳の女性ナガセはパワハラで新卒入社の会社を退職。工場勤務、カフェの手伝いなどで生活。職場で見た世界一周クルーズの163万円を貯めると決め、その後友人が娘と家に転がり込む。表面的な技巧に走ることなく日常を描く作品は退屈なようで、虚しさを含めて自分を肯定。30歳にしてこの作品が書けるのは奇跡と言っていい。文学が「人とは何か」を描くものなら、これほど文学している作品はない。日本各地で「私はナガセだった!」と共感している人がいるはず。2019/07/01

風眠

299
第140回芥川賞受賞作。「低収入・非正規雇用」でも、逞しく生きる姿を描いていることが本当のテーマではないように思う。一年間必死に働いた収入が、世界一周旅行のツアー代金とほぼ同額・・・って、それってどうなの?と、自分の労働価値を見出そうと、考えたり立ち止まったり、納得できる答えを探そうと静かにもがいている姿こそがテーマなのではないかと思う。革命は起こらない、淡々と日常が過ぎてゆくだけ。その先に希望があるように感じたのは、ただの私の願望なのかもしれない。2012/06/05

hit4papa

251
発表された当時は、派遣切りやワーキングプアといった問題がクローズアップされていたようで、世相を反映した作品なのでしょう。しかし、本作品は、そこに見られる悲劇に拘泥するのではなく、むしろ、日々を前向きに生きていこうという活力、そして清々しさを感じさせてくれます。

エドワード

233
「お仕事小説」というものがある。仕事を通じて自己実現できたらそれは無上の喜びだろう。「舟を編む」の感想で書いた通り、のめりこめる仕事に出会えた人は幸せ者だ。だが、それはほんの一握りの人。世の中の99.9%の人は、時間を売って金に換えている。ナガセやツガワのように。化粧品の工場。印刷会社の内勤。仕事なんてつまんねえよ。世界一周するお金が年収と同じって、そりゃ愕然とするわな。どんな人間にだってプライドはあるのよ。非正規雇用、パワハラ、モラハラ。「ツガワはいいな、やめられて。」このカイシャ、今の日本の縮図。2015/10/12

ネギっ子gen

193
2作収録。芥川賞の表題作の冒頭に、2枚のポスターが登場する。「世界一周のクルージング」の方は、本作に以降も何度も出てくるが、私が注目したのは、もう一枚の「軽うつ病患者の相互扶助を呼びかける」ポスターの方。<前の会社を辞めた直後はともかく、それからもう数年が経っているのに、そういうものにお世話になっている場合でない>とあるので、その手のことがあったと匂わせているが、本作では顕在化しない。で、2作目『十二月の窓辺』が、前作の前日譚。結構なブラック職場振りに、それで表題作か、と合点。作者の実体験のようですね。⇒2020/04/26

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