内容説明
民主主義とは何なのか? そこに限界はあるのか? 台頭するポピュリズム、強権主義に対して、民主主義は生き残っていくことが出来るのか?
新自由主義経済、グローバリゼーション、IT化の加速などに伴い、貧富や情報の差は拡大し、世界は分断を深めている。民主主義の在り様が変化し、その賞味期限切れすら囁かれる現状において、我々は今ここにある民主主義を見つめ直し、再定義しなければならない。
トランプ氏再選の可能性、ロシア・ウクライナ戦争の行く末、GDP神話の崩壊、暴走するAI・・・・・・民主主義の危機に伴って噴出する様々なニュースについて、“知の巨人”佐藤優が縦横無尽に語りつくした、これからの世界を見通し、生き残るビジネスパーソンに送る一冊!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kentaro
25
新自由主義の基本は、すべて市場原理に従うという考え方です。市場原理に従うことで所得格差は広がり、富める者はさらに富み、貧しい者はさらに貧しくなっていく。新自由主義がもたらしたアメリカの様相を、言語学者チョムスキーは次のように語っています。大多数の国民が、新自由主義の原理に従って、「市場にすべてを任せろ」「自由競争の原理に従え」と言われているのです。こうして、アメリカ国民はお互いに競争させられるなかで、さまざまな権利を奪われ、社会保障を削られ、あるいは破壊され、あるいは縮小させられているのです。2025/08/20
ta_chanko
16
個人の自由と機会の平等を掲げるアングロサクソン型の自由民主主義が民主主義のすべてではない。リーダーの強い指導力とメンバー間の平等を大事にするロシア型の民主主義もあるし、君主を頂点に戴きメンバー間の調和を重んじる日本型の民主主義もある。そもそも民主主義は独裁政治と親和性が高い。ナチスドイツが民主的なヴァイマル体制から生まれたように。現在、世界各地で民主主義は危機を迎えているように思える。国家主権・グローバル化・民主主義は鼎立しないという国際政治のトリレンマの状態。特に近年、国家主権が前面に出てきている。2025/06/11
Sakie
16
民主主義が正しく機能していないから、今の日本はおかしいのだと思っていた。しかし民主主義は一つの決まった形があるわけではない、と佐藤優は噛み砕いて説く。日本人が思う民主主義はアメリカのもの。本来、民主主義は地域ごと国ごとに多様であるもの、という前提は押さえておきたい。つまり日本の民主主義は日本なりに機能している。ただし民主主義は理想的でも安定的でもないし、特に正義でもない。さらに佐藤優は多くの国で民主主義が制度疲労を起こしていると考えている。非欧米的な民主主義の形を多く認識しておいたほうが良さそうだ。2025/04/10
くものすけ
15
GDPに疑問を抱く。確固とした指標として、ほとんどの国が経済規模や国家の政策立案の要としているGDPそのものに疑問符をつけているところが面白い。アメリカのGDPの7%に過ぎない経済規模のロシアが、ウクライナ戦争で西側諸国と互角の戦をしている事を指摘、”GDP"とは何なのかGDP以外に国力を計る指標がありそう。また、様々な形をした民主主義があると、外部からは”民主国家”とはとても見えないが、自国民にとってはプーチン、習近平の独裁政権も立派な民主国家と思われているらしい(少々驚きではありますが…) 2025/03/14
tharaud
9
幅広い教養と官僚としての経験から現在の民主主義の状況を解説する。SEALDsへの辛辣な意見やHIKAKiNへの賞賛などは興味深かった。民主主義を考えるためのよいブックガイドにもなっている。2025/08/18