岩波新書<br> フェイクニュースを哲学する - 何を信じるべきか

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岩波新書
フェイクニュースを哲学する - 何を信じるべきか

  • 著者名:山田圭一【著】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 岩波書店(2024/09発売)
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  • ISBN:9784004320333

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内容説明

他人の言葉,うわさ,専門家の発言,マスメディアの報じるニュース,ネット発のニュース,あるいは陰謀論……,私たちは瞬時に莫大な情報を手にする一方,時に何を信じたらいいのか,わからなくなってしまう.本書では,「知る」ことを哲学的に考察し,「真理を多く,誤りを少なく」知るための方法,そしてその意味を問う.

目次

まえがき
序 章 フェイクニュースとは何か
新たな事態が生じている
真実か否か
正直か否か
定義ではない明確化
なぜ問題なのか
真理の価値って何だろう
真理を気にかけることの価値
第1章 他人の言っていることを信じてもよいのか
リアルとネット
確かなものって何だろう
可謬主義と不可謬主義
証言の認識論
証言だけでは不十分(還元主義)
証言だけで十分(非還元主義)
認識的な自律と依存
特定の証言を信頼する条件
聞き手は何をすべきか
ネット空間での人格の同一性
モニタリングができないネット空間
政治的な動機
経済的な動機
面白がらせたいという動機
評価可能な能力条件とは
ネットの証言を取り巻く不透明さ
認識目標の再点検
第2章 うわさは信じてよいものか
信じてはいけないものの代表?
うわさとは何か
オルポートの実験
認知的な歪み
うわさは信じてもよい(コーディの反論)
判断を保留する意味
ネット上のうわさは信じてよいのか
ワンクリックで伝わる功と罪
再投稿における保証
情報源の信頼性に対するリスク
理解と納得の共有
感情の正当化と共有
うわさ話を楽しむ
自由の制限
うわさを楽しむ条件
第3章 どの専門家を信じればよいのか
専門家不信
専門知についての三つの困難
論証の仕方
過去の証言の記録
利害関心とバイアス
同意する専門家の多さ
信念形成ルートの独立性
メタ専門家による同意
他の専門家による査定
査読制度
認識の基礎としての制度
困難をどう克服するか
知的な謙虚さ
専門家への信頼は取り戻せるか
第4章 マスメディアはネットよりも信じられるのか
インターネットメディアの登場
情報の門番
マスメディアの理想と現実
査読制度との類比は成り立つか
マスメディアを信頼する根拠
信頼性への反論
メディアの評価の細分化
陪審制度との類比は成り立つか
証言選別の妥当性
多様性の認識的価値
インターネットのフィルタリング問題
フィルターバブルの認識論
エコーチェンバーの認識論
認識バブルに陥らないために
第5章 陰謀論を信じてはいけないのか
ポパー,そしてピグデンの考える「陰謀論」
不合理ではない 社会における開放性
歴史学の陰謀論
心理学の陰謀論
カッサムによる批判
知識を失わせる
政治的プロパガンダ
反証不可能性
三つの対処法
終 章 真偽への関心は失われていくのか
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

84
これはフェイクニュースの理論のような感じの本です。「フェイクニュースの見分け方」という本は実際の例をかなり取り上げている感じでしたが、フェイクニュースが出てきた事情や陰謀論などとの関連などを哲学的な論点で評論しています。非常にまじめな本であるとともにかなり難しいことをわかりやすく説明してくれています。「どの専門家を信じればいいのか」などはためになりました。2024/11/15

けんとまん1007

66
そもそも、情報とは何か?正しさとは何か?自分で判断するためには、何を考えるのがよいか?などを、考えながら読んだ。自分なりに考えているのは、極力、一次情報に近づくこと。安易に判断してしまわずに、考え続けること。どなたかの感想にあったネガティブケイパビリティだと思う。あとは、時間を置いて振り返ること、振り返ろうとする姿勢だと思う。今の時代、いろいろなバイアスがかかっていると思うが、それを前提に考えるだけで、随分、違ってくると思う。2024/12/11

壱萬参仟縁

56
S図書館。知的に隷属している人:他人は自分の知らないことを知っていると考えてしまい、他人の考えにいつも従ってしまう人(113頁)。そうではなく、判断を委ねるべき場面で判断を委ねるべき相手にきちんと判断を委ねることができる人が知的な謙虚さという徳をもつ人。判断を自律的に行える人こそ本当の知的に自律している人(114頁にかけて)。E・パリサーのフィルターバブル:ネットで利用者の思想や行動特性に合わせた情報ばかりが作為的に表示される現象(139頁)。エコーチェンバー:SNSなどで自分と同じような意見ばかりが跳ね2024/11/23

よっち

40
フェイクニュースとは何か。「知る」ことを哲学的に考察し、「真理を多く、誤りを少なく」知るための方法、そしてその意味を問う1冊。真実性や正直さの欠如など様々な観点が提案されてきたフェイクニュースの何が問題なのか。様々な動機により間違った情報により被害が広まる、知的権威への信頼が損なわれる、意思決定の正統性が失われるといった問題。専門家やマスメディアの信頼は取り戻せるのか、陰謀論に対してどう向き合うべきなのかなど、視界に入る情報が玉石混交と化している情報を吟味することの意味をいろいろ考えさせられる1冊でした。2024/10/13

武井 康則

16
我々は真実にたどり着けるのかは哲学で認識論と呼ばれ、あまり興味がなかったが、SNSという今までになかった情報媒介が現れ、20世紀終わりに「社会認識論」という分野が確立されたという。SNSをどこまで信じていいのか、まず何をどこまでどうやって信じていいか、ネットニュース、陰謀論、政治家の発信。それらを哲学的に丁寧に簡潔に理知的に論理的に語っていく。小手先でなく思索とは、そのための真実をどう獲得するか、真摯な姿勢と文章が最後まで貫かれている。今年のベストに入る一冊。2024/12/17

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