内容説明
電子版は本文中の写真をすべてカラー写真に差し替えて掲載。
8世紀の初め、ジブラルタル海峡を渡ってイベリア半島、さらにフランスまでを席巻したイスラーム勢力。その後はキリスト教徒側が少しずつ押し戻し、1492年のグラナダ陥落でイスラーム勢力を駆逐した。この800年に及ぶ「聖戦」はレコンキスタの一語でまとめられてきた。だが、どちらの勢力も一枚岩ではなく、戦争と平和、寛容と不寛容、融和と軋轢が交錯していた。レコンキスタの全貌を明かす、初の通史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
131
アルハンブラ宮殿やコルドバのメスキータを訪れると、カトリック国スペインに残るイスラム文化の影響力を痛感する。イベリア半島からアラブ勢力を追いやったレコンキスタの結果とされるが、その一言で要約できない長い歴史は恐ろしいほど複雑怪奇だ。異なる宗教勢力に二分され多数の王朝が乱立する中でカトリックとイスラムの同盟も珍しくなく、婚姻や合従連衡、裏切りと戦争の時代が800年近くも続いたのだから。これに山がちな地形が重なり、多様性に満ちたスペイン社会を生む原動力となったレコンキスタは、今日に通じる問題を投げかけている。2024/10/31
アキ
100
レコンキスタとは、一般に711年ムスリムにより侵入されたスペイン領域の奪還と言われているが、中世の当事者らはレコンキスタという語を使っていない。近世スペインという国家を形成する上でレコンキスタ神話を編み出した。当時の社会情勢をイベリア半島だけでなく、中東やローマ教皇も含めて解読している。異端審問制も同じ頃に開始された。イベリア半島ではキリスト教、ユダヤ教、イスラームの距離が近く、それ故に複雑な要素が絡んでいたことを知った。現代スペインにも通じる歴史のあり様を、単純化する危険性を戒めるメッセージ性を感じた。2024/10/30
skunk_c
84
高校の世界史ではこの出来事をほぼ1492年という「点」で扱うだけで、ムラービト、ムワッヒド、ナスルといったイベリア半島のイスラーム国家も年表と図表に登場する程度。それをスペインの中世史の形で800年にわたり丁寧に叙述している。宗教の違いにユダヤ人も絡み、さらに同族内の権力争いなどもあって、キリスト教勢力が徐々に南に押していくが、単純に話は進まない。何しろナスル朝がカステーリャに臣従していたというのだから驚く。地図、系図、年表も充実しており、ヨーロッパ中世史の欠落していた部分を補う好著と思った。2024/12/16
よっち
30
イベリア半島で勢力を伸ばしたイスラム勢力をキリスト教徒側が少しずつ押し戻して駆逐した「レコンキスタ」。その800年に及ぶ聖戦の全貌について語る通史。イスラムが進出する前の古代ヒスパニアの歴史から、西ゴート王国時代、ウマイヤ朝の征服とアンダルス社会の成立、後ウマイヤ朝時代とアストゥリアス王国の成立から始まるレコンキスタ、西欧世界の社会・経済・宗教的な革命による力関係の逆転、両勢力の混乱による一進一退の攻防から征服活動の実態に至るまで、両勢力も決して一枚岩ではなく、思っていた以上に複雑だった事情が伺えました。2024/10/09
kk
30
図書館本。中世イベリア半島、800年にも及ぶキリスト教勢力による国土回復運動「レコンキスタ」。本書はその大まかな歩みを概観しつつ、その一筋縄ではいかない複雑な性格を捉え直そうとする意欲作。キリスト教側とイスラム教側、両陣営の決して一枚岩ではないプレイヤー達の離合集散や、宗教・国制の境を相対化するような政治的・社会的動向などなど。現実の生き残りを賭けて「割り切れない」言動を取らざるを得なかった中世人の生き様が、今日のスペイン文化の「割り切れなさ」につながっているとのご説。なるほど、なるほどって感じです。2024/10/05
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