内容説明
女性兵士、従軍慰安婦、女子割礼など国家、暴力をめぐる難問をフェミニズムはどう考えるのか。上野千鶴子、大越愛子、嶋津格、岡真理ほか。
目次
はじめに
I
第一章 女性兵士の構築[上野千鶴子]
1 はじめに――湾岸戦争の衝撃
2 湾岸戦争前史――米軍女性兵士の登場
3 軍隊内機会均等
4 ジェンダー平等のディレンマ
5 軍隊と攻撃性
6 兵役と市民権
7 「フェミニズムと軍隊」論争:日本の場合
8 結び
第二章 論点としての「女性と軍隊」――女性排除と共犯嫌悪の奇妙な結婚[中山道子]
1 はじめに
2 リベラリズム的見地からする軍隊への女性進出論
3 フェミニズムと国民国家の両義的な関係
4 国民国家と立憲主義の両義的な関係
5 現代日本における自衛隊の女性進出
第三章 フェミニズム政治のメタクリティーク[田島正樹]
1 はじめに
2 軍事組織への参加をめぐるフェミニズム内部の対立
3 「倒錯した」欲望と個人の政治
4 フェミニズムの政治スタイル
5 アンチフェミニズムの先駆的覚悟
II
第四章 「国家」と性暴力[大越愛子]
1 私は「慰安婦」ではない
2 国家を法廷に
3 近代国民国家とジェンダー
4 国家とセクシュアル・ポリティックス
5 戦争強姦の意味するもの
6 大日本帝国の欲望
7 結びにかえて
第五章 慰安婦問題の周辺[嶋津格]
1 予備的考察 その1――マッキー総督の辞任
2 予備的考察 その2――事実の認定と規範的前提
3 慰安婦問題の事実
4 規範的前提
5 結語にかえて
第六章 国家による性規制の論理と性的自己決定権――「夫婦間強姦」にかんする議論をめぐって[高島智世]
1 はじめに
2 夫婦間における強姦論の現在
3 「性犯罪」という解釈装置
4 近代日本における性犯罪規定の成立
5 戦前の刑法学説における夫婦間の性暴力
6 戦後の夫婦間の性暴力論――「家庭への公権力の不介入」という論理
7 おわりに――私秘性というジレンマ
III
第七章 「同じ女」であるとは何を意味するか――フェミニズムの脱構築に向けて[岡真理]
1 ポストコロニアリズムと第三世界フェミニズム
2 「西洋フェミニズム」におけるオリエンタリズムの機制
3 「女性性器手術」をめぐるフェミニズム論争――その対立の焦点
4 没歴史的な議論が再生産するレイシズム
5 「同一化」がもたらす差異の転移――フェミニズムがレイシズムに転化するメカニズム
第八章 女子割礼および/または女性性器切除(FGM)――一人類学者の所感[大塚和夫]
1 はじめに――本章のねらい、その他
2 女子割礼の諸相――その概観、そして類型と目撃譚
3 女子割礼の存続理由――当事者の理由づけと研究者の説明・解釈
4 フィールドでのFGM――ムスリム女性人類学者の感想
5 結びに代えて――「暴力」と「介入」
IV
第九章 ジェンダーの視点から見た近代国民国家と暴力[江原由美子]
1 はじめに
2 女性兵士問題――フェミニズム政治のゆくえ
3 「国民国家」と「性暴力」
4 「女性性器手術」問題をめぐって――フェミニズムと自文化中心主義
5 「ネーション」と「フェミニズム」――グローバル・フェミニズムの可能性
参考文献
執筆者紹介