内容説明
近代日本のセクシュアリティ言説形成過程に見出された一定のパターンをオナニーに関する言説に焦点に検証するとともに、「性=本能論」「性=人格論」が拮抗し交錯して慣習や制度を形成してきた様を素描。哲学、理論社会学、フェミニズムなどセクシュアリティ研究の成果に理論的検討を尽くし、資料を検証する方法論の確立を目指す。
目次
復刊にあたって
まえがき
[理論編]
第一章 セクシュアリティの概念定義をめぐって
1 「セクシュアリティ」という概念
2 <本質主義・対・構成主義>再考
3 ジェンダー、セクシュアリティ概念定義の本質的困難
4 セクシュアリティ概念の言語論的転回
5 無定義概念としてのセクシュアリティ
第二章 歴史社会学としてのフーコー
1 フーコー・インパクト
2 近代主体の系譜学――フーコーの研究遍歴
3 セクシュアリティの歴史
4 フェミニズムとフーコー
5 言説分析という方法
6 言説分析への援軍
第三章 セクシュアリティの歴史社会学の方法基準
1 社会学における、テーマとしての「性愛」の浮上
2 テクスト・クリティークについて
3 言説の「質」の問題
4 性愛の理論化
5 セクシュアリティと主体性の理論図式
6 日本社会診断の問題
7 セクシュアリティの歴史社会学への出立
[歴史編]
第四章 開化セクソロジーのエピステーメー
1 『造化機論』の登場
2 開化セクソロジーに対する評価
3 開化セクソロジー・ブームの全貌とその問題系
4 処女膜の近代
5 開化セクソロジーの情欲論
第五章 オナニー有害論の内発的発展
1 上野―小田論争で残された問題
2 開化セクソロジーにおけるオナニー言説
3 近代以前の日本社会におけるオナニー観
4 オナニー有害論の内発的発展論
第六章 オナニー有害論の言説化
1 開化セクソロジーとの断絶
2 医学界の成立と『東京医事新誌』誌上のオナニー論争
3 オナニー言説の領域分化
4 新興学界・版図拡大戦略としてのオナニー有害論
第七章 「性欲」の誕生と通俗性欲学のエピステーメー
1 「性欲」という概念
2 大拙の「性慾論」
3 通俗性欲学のエピステーメー
4 開化セクソロジーと通俗性欲学の断絶
第八章 制約のエコノミー問題
1 発動し、処理せねばならぬものとしての性欲
2 性欲のエコノミー問題
3 夫婦間性行動のエロス化
第九章 「強い」有害論
1 オナニー有害論に対する社会学的説明
2 オナニー有害論/無害論の恣意的線引き
3 「強い」有害論の言説編制
4 生きられた現実としての「強い」有害論
5 オナニー有害論のナショナリズム
6 性欲を統御する主体と修養・立身出世
7 オナニー有害論の階級/階層性
第一〇章 「弱い」有害論
1 「弱い」有害論の言説編制
2 「万病の基パラダイム」の終焉
3 オナニー有害性のラベリング理論
4 オナニーの規制緩和とオナニストの囲い込み
5 統計のトリックとレトリック
6 養生訓パラダイムとフロイティズムシンクレティズム
第一一章 性欲自然主義と性=人格論
1 性欲自然主義
2 もう一つの性欲論:性=人格論
3 性=人格論の源流1:恋愛至上主義
4 性=人格論の源流2:純潔教育
第一二章 性欲のエコノミーの変容
1 「セクシュアリティの近代」の階級/階層問題
2 澤田順次郎主幹・性雑誌の読者層
3 戦時期・戦後期の連続/不連続問題について[中間考察]
4 性欲のエコノミー秩序の完成態
5 オナニーの規制緩和
ほか