内容説明
本を読み、人生を語る、みんなの大切な時間
この小説は、著者の母が参加していた読書会の風景がきっかけで生まれました。
本を読み、人生を語る。人が生のままの姿になり言葉が溢れだす。そんな幸福な時間をぎゅっと閉じ込めたい、という願いが込められた物語です。
〈あらすじ〉
小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」には今日も老人たちが集まる。月に一度の読書会〈坂の途中で本を読む会〉は今年で20年目を迎える。
店長の安田松生は、28歳。小説の新人賞を受賞し、本を一冊出したが、それ以降は小説を書けないでいる。昨年叔母の美智留から店の運営を引き継いだばかりだ。その「引き継ぎ」の一つに〈坂の途中で本を読む会〉のお世話も含まれる。何しろこの会は最年長92歳、最年少78歳、平均年齢85歳の超高齢読書サークル。それぞれに人の話を聞かないから予定は決まらないし、連絡は一度だけで伝わることもない。持病の一つや二つは当たり前で、毎月集まれていることが奇跡的でもある。安田は店長の責務として世話係だけをするつもりだったが、「小説家」であることを見込まれて、この会の一員となる。
安田は読書会に対しても斜に構えていた。二作目が書けない鬱屈がそうさせていたのかもしれない。しかし、読書会に参加し、自分でも老人たちと「語る」ことで心境に変化が訪れる――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
467
「読書会」というワードに惹かれて読み始める。おじいちゃんおばあちゃんの会話になかなか慣れずに途中飛ばし飛ばしに。ラスト2編はそれでも読んでよかった。ちなみにわたしは読書会というのには参加したこともないし、これからもないだろうと思う。2025/12/25
starbro
395
第172回直木賞候補作第二弾(2/5)、朝倉 かすみ、3作目です。本書は、超高齢者読書会&喫茶店シトロン雇われマスター成長譚でした。良作ではありますが、直木賞受賞までの勢いは感じられませんでした。しかしながら文藝春秋刊のため、可能性はあります。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639189762025/01/08
佐藤(Sato19601027)
360
後半のエピソードに感情が揺さぶられる。北海道小樽市の喫茶シトロンで、毎月第一金曜日に集う老人たちの”坂の途中で本を読む会”が、20周年を迎え、公開読書会と記念冊子の刊行を行うことになった。読書会と記念事業の様子が、20代の新規会員、新人賞作家兼雇われマスターの安田松生の視点で語られる。順番に朗読して、感想を言い合う。物語の内容だけではなく、朗読する声や抑揚にも賛同しながら、時には本筋から大きく脱線もする。しかし、本好きの仲間と一緒にいる楽しい時間。微笑ましい中に、人生の終盤へ向けた覚悟も見える。良い。2025/01/10
修一朗
274
こんだけ闊達に付き合える80代,それだけで奇跡の理想郷だ。自分の親はもう亡くなってしまったが,こういうのいいなぁを具現化してくれているのだ。自分の親がその歳のころこんな感じで丁々発止しゃべるなんてできなかったもの。「誰も知らない小さな国」の解釈もいい,っていうかこんなに深く読み込んで感想を言えあえる80代が素晴らしいのだ。お話はこのまま老人の穏やかなサークル活動に終始するのかと思いきや,終盤にやっくんの身にも波乱が。思わずジンとしてしまうオチがついた。自分のような世代に優しく刺さるいいストーリーだった。2025/06/27
道楽モン
263
本が人の心を豊かにし、読書会は人との繋がりを豊かにするのだろう。読書によって得られる感じ方は読み手の心の鏡であり、他人の感想はその人の人生観を反射させるものだ。感想を能弁に語ろうが、拙い表現であろうが、それは表層的なもので、一冊の本から受け取るものは、各人における正解である。他人が物申すものではない。そこには他人に対する敬意と、自らの経験では生まれ得ない発想の教えがある。想読書会の醍醐味とはこれかな。78歳から92歳の高齢者6人による20年間続く読書会が舞台。参加者各自の人生や縁による物語に収束する。2024/10/27
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