内容説明
ドイツで110万部超のベストセラー! 健康が義務とされ、科学最優先の健康維持システム<メトーデ>が国民の生活を管理。体という究極の個人情報がすべて筒抜けの近未来ディストピア小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
39
コロナ禍を経て書かれた快作『人間の彼方』の作家による作品なだけに、これもまたパンデミックを経験して書かれた長篇かと思っていたが、なんと原書が刊行されたのは10年以上も前とのこと。少し滑稽ですらあるこのディストピアに、世界全体が大きく近づくことになって作者はさぞ驚いたことだろう。やや理屈っぽく独特な雰囲気をまとってはいるが、ミステリーのような面白さも核にあって、非常に興味深く読めるディストピア文学であった。しかし、近未来SFとしてはシステムをもう少し掘り下げてマクロな視点もある方が個人的には好みだ。2024/07/26
おだまん
12
国家と健康管理。コロナ禍以前に書かれたディストピアであるがそれに追いつこうとしている現実。科学的要素もちりばめられており、最後まで息をつかせないサスペンスも楽しめました。2024/08/23
ののまる
10
ひゃーーー 怖い怖い怖い。でもコロナ期そうだったよな(この小説はコロナより前に書かれているのだけど)。コロナにかかった人は犯罪者って感じの。病気になる人は社会のお荷物で、個人の予防努力が足りない,福祉のお金一杯使わせる邪魔な存在という圧力はコロナ以外でも、うっすらずっとある。介護が必要な老人に対してもある。2024/08/31
イツキ
5
健康が市民の義務となった国で弟が罪を着せられて自殺した女性の物語。個人の事情はほぼ考慮されず健康的な生活とその報告を義務付けられている社会の息苦しさと、その社会を保つために行われる裁判などの様子にはゾッとさせられます。健康が大切でそのために努力することが大切なのはそのとおりですが何をおいても健康を保たなければならない社会というのは不健康に感じられました。2025/04/20
トト
5
2050年頃のディストピア未来を描くドイツ作家のSF小説。「メトーデ」とは健康至上主義の究極の社会体制。人間の心身の状態を管理し、毒物の摂取を極端に嫌う。煙草は勿論カフェインもダメなので、飲み物は白湯(にレモンを少し絞ったり)。反メトーデ的謀略の罪で囚われ、国家的裁判に巻き込まれた女性の顛末を描く。マスク警察やら行き過ぎたウィルス嫌悪のコロナ 禍を経験した我々は、簡単に魔女狩りが起きてしまうことを知った。この作品の結末は、まさに国家、社会に対しての個の無力さを感じて怖くなります。原作は2009年の作品。2024/09/13