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内容説明
江戸時代の女性名は現代とどう違ったのか?「お」の付く女性名はどこに消えたのか? 近代女性名の「子」とは何か? 何が今日の「夫婦別姓」論争を生み出したのか? アイデンティティとして名前に執着する現代の常識は、どのように生まれたのか?――男性名とは別物だった江戸時代の女性名が、明治期に男女共通の「氏名」となって現代の諸問題を抱えるまで、近代国民国家の形成、文字の読み書きや捺印、戦後改革など様々な事象を通して、日本人名文化の歴史的変遷を明らかにする。
目次
プロローグ──愛着の始まりを探して/「お」の付かない現代/女性からみた「氏名」/本書の構成/第一章 江戸時代の女性名/1 「お」の字とは何か? /圧倒的な二音節型/おの字名の「お」/「お」なしの作法/おやすがやすか、やすがおやすか? /並行する正解/「お」は何れより来たる? /2 多様な二音節型/意味不明とはいうけれど/符号としての本質/異なる町村を比べる/だんだん離れてみる/風習はいろいろ/3 三音節型と地域性/三音節型の類型/三音節型の分布状況/濃度の違い/「お」は付かない/四音節型の孤城/類型とその他/これはあなたのお名前か? /第二章 識字と文字の迷宮/1 文字を書くのは誰か? /自分の名前を書けたのか/ムラのある世界/職業と識字/村請制と村役人/「村」と「家」に生きる/無識字もいる日常/再び女性名の森へ/2 仮名文字と仮名遣い/おてゐとは俺のことかとおテー言い/音韻と仮名遣い/音を再生できるか? /方言と相通/書き手の癖? /仮名の字形もこだわらない/伝わるのなら漢字でも/それは書き交ぜではない/姫様にご用心/3 似て非なる捺印文化/実印に名前なし/シルシに始まる捺印文化/家の印と女の印/印からもわかる多表記通行/第三章 名付け・改名・通り名/1 名付けと改名/最初の名付け/女は改名しない? /幼年期の改名/願掛けの名付け/生きるために/婚姻時の改名/名前の相性占い/法名への改名/奉公と通り名/まつ改しげ/名前はその人だけのもの? /昔の名前は出てきません/2 源氏名と三字名/源氏名という通り名/吉原の遊女/禿と芸者と遣り手/京都の芸妓/奥女中の名前/名前が変わっても/3 朝廷女官の呼名/偉すぎる女房たち/それ以下の女房と女中/院・宮・摂家の女房/伊予は小槻敬子/第四章 人名の構造と修飾/1 男の人名構造/男性名との違い/人名以前の氏姓/氏姓の「姓」化/嵯峨天皇と「名」の変革/官位で呼ぶ/実名と仮名の並立/家名の「姓」化/官位の自称と主客逆転/庶民の名前/庶民の苗字/人名的要素は浮気しない/2 女性名の変遷/「売」圧倒の時代/貴族女性の「子」/新型「何子」は形だけ/にょ・こ・のまえ・ごぜん/おの字名への混沌/繁姫源郁子/女性名に苗字は付かない/3 苗字と女房/公儀の常識/近世苗字の三大要素/佐藤のおせん/赤林幸/女房という名前/慣習としての女房/今とは違う人名文化/妻の呼び方/4 文雅の世界は無理をする/およしは葭女、おさとは高子? /飾りの子と女/松本順女と広田濃婦子/無理からみえる道理/巫女の名/やり直しの始まり/第五章 明治の「氏」をどう扱うか? /1 近代氏名の時代へ/日常の瓦解/おいよ・おうたにゃ関係ない/女官たちの改名/苗字自由令と戸籍/そらそうよ/氏名の誕生/男女人名の再合流/2 苗字と女性と新政府/新制「氏」の誕生/内務卿の思惑/妻は夫の姓氏を用いよ/廃案の背景/苗字強制令/内務卿の再挑戦/議論の紛糾/妻は所生の氏を用いよ/民法までは我慢/政府から現場へ/3 現場の判断と種痘名簿/戸長と種痘/種痘医福永謙造/根強い常識/そこにこだわりはあるか? /藤田嘉蔵妻太田はる/4 民法による決着/戸籍用紙の先行/ボアソナード民法/現場の憤懣/「氏名」の確立/第六章 「お」と「子」の盛衰/1 「子」の字の流行と変質/国民国家への改変/三音節型はいつ全国化するか/近代「子」の字の起点/名の一部とみることを得ず/戸籍名「何子」の流行/「お」から「子」へ/非難と弁護のなかで/「お」の字の斜陽2 「子」なしにも「子」をつける作法/「子」は「お」の後継/手紙における「子」の作法/女学生の「妙な流行」/「子」は付けなくていい/変わりゆく執着/第七章 字形への執着/1 四角な文字と片仮名/くずし字を先に学ぶ/文字は手書き/四角な文字の襲来/女性名の片仮名化と識字率/片仮名先習と「変体仮名」の誕生/執着は排他の兆し/実印は一代限り/名を刻む朱色の実印/2 一定主義の勃興/異字の通用/同字の異体/澤も沢も同じ/迷惑な一定主義/女性の「苦痛」/正太郎は庄太郎にあらず/くずし字を書けない若者たち/姓名の字画/3 姓名判断の大流行/流行のはじまり/煩悶と定着/私的な通名/近代氏名の人名文化/第八章 氏名の現代史/1 変わりゆく漢字/占領時代と国語改革/当用漢字と平仮名先習/人名の文字制限/当用漢字字体の出現/「標準」は誰のため? /やむを得ぬ人名用漢字/常用漢字と筆写体/情報機器の普及/2 愛着の確立/法務省の方針/愛着の壁/執着から愛着へ/人名用漢字と手書き/文字コードが違うから/戸籍統一文字/3 個人の氏へ/家の廃止と個人の尊重/高度経済成長/改姓はイヤ/別になんとも/氏への現代的愛着/4 名による個性の顕示/美の字とミ音(昭和二〇~五六年)/戦後二音節型とエ・ミ・カ・オリ(昭和五七~平成二年)/美咲時代と多様化(平成三~一四年)/読めない名前の増加(平成一五~令和四年)/現代男性名概観/名付け意識の分断/フリガナ作戦決行前夜/エピローグ──去る者は日に以て疎く……/女の名前に氏が付く/氏名へのこだわり/同じ呼び名で違うもの/符号と個性の苦悩/来る者は日に以て親し/あとがき/参考文献
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