内容説明
本書を読んでスペイン旅行をしたら、必ずや闘牛を見るだろう。
そんな筆力が、本書の闘牛シーンに漲っている。<西上心太>
闘牛中の事故で亡くなった兄を悼むためにスペインへ向かった怜奈は疑念を持つ。兄は殺されたのではないか。だが決定的な証拠も証言もない。調べるうちに闘牛に魅せられた怜奈は、女性闘牛士になるという夢を持つ。古いしきたりに翻弄されながら修行に挑む怜奈だったが、兄を貶めた魔手は忍び寄っていた――。構想15年。スペイン闘牛界に蔓延る闇を、ミステリー界の気鋭が描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のり
49
唯一の家族の兄まで、闘牛中の事故で失った「怜奈」。兄の不審な死に疑問を持ちスペインに渡る。兄も身を寄せていた場に怜奈も世話になりながら、嫌悪しかなかった闘牛を生で観戦し虜となる。自らも闘牛士になる為にスペインの家族に支えられながら努力を重ね、兄の死の真実を探る。とにかく死と背中合わせの危険が常にある。臆したら罵倒され、出場の機会も遠のく。闘牛界の闇に焦点を置いたミステリー。家族を大事にした怜奈にとって、この先の希望がみえる。2024/12/08
left7
13
下村さんの作品ではあるものの、ちょっと古い感じのするタイトルやカタカナの名前が苦手な自分にとってはやや期待値が低かったのですが、読んでみたら想像以上でした。ある意味下村さんの本領が発揮されていて、ちょっと特殊な状況でのルールや常識を上手く利用したミステリーとなっていて、話が上手くいきすぎている部分はあるものの、それもさほど気にならずに読めるぐらい面白かったです。また他の下村さんの作品を読むのが楽しみです。2025/07/15
汲平
6
闘牛に対して知識も興味もなかったので、元々闘牛を嫌っていた主人公が一度見ただけで魅了され、闘牛士を目指すのが理解できなかった。そのあと描写される闘牛士を目指すものの苦衷や闘牛会の裏事情、スペインの下町の猥雑さなどにちょっと閉口しながら読む。それが終盤いきなりその全てがミステリの伏線だった!さすがは下村敦史と感嘆しました。2025/04/18
terukravitz
6
★★★★☆2024/05/21
ズッキーニ
3
闘牛×ミステリという、異色の組み合わせ。 闘牛の方のインパクトが強すぎてミステリ要素は弱く感じたが、闘牛要素を含めて解決に向かう流れなどは面白かった。 スペイン語のことわざが会話の中でよく出てきたり、食事の場面やバルでのやり取りの様子など、スペインの生活が随所に描写され、旅行小説としても楽しめる小説だと感じた。 読み終わった後にyoutubeで闘牛を見てみたが、読みながら思い浮かべていた映像とかなり近く、情報収集の深さとそれを物語に落とし込む表現力は見事。 機会があれば実際の闘牛を見てみたい。2024/11/06