内容説明
日本仏教の最大宗派・燈念寺派で弱者の救済を志す若き僧侶・志方凌玄。バブル期の京都を支配していたのは、暴力団、フィクサー、財界重鎮に市役所職員……古都の金脈に群がる魑魅魍魎だった。腐敗した燈念寺派を正道に戻すため、あえて悪に身を投じる凌玄だが、金にまみれた求道の果てに待っていたのは――。圧巻の社会派巨編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
66
魑魅魍魎とはまさにこの人たちだ。不透明な仏教宗派と独特な都市・京都を舞台に、その中でうごめく人たちの野望。主人公の志方凌玄は日本仏教最大宗派「錦応山燈念寺派」の新人僧侶として登場する。田舎の小さな寺の跡取りで、仏教大学の成績も中の下、25歳、別段取り立てるところもない。ところが運命の出会いとともに、フィクサー、ヤクザ、行政役員に取り込まれ、やがて支配して登り詰めてゆく。バブル期の駅近隣地上げが絡む案件はきな臭さマックス。手を汚さずとも悪にかわりない。私利私欲を仏法にすり替える思考は恐ろしさしかない。2024/10/21
のぶ
58
凄まじい物語だった。バブル期とその後の京都の仏教界を舞台に、燈念寺派の若き僧侶、志方凌玄を主人公にして、その世界の裏側をヤクザ、フィクサー、財界の重鎮、政治家、市役所職員など、古都に群がる魑魅魍魎が群がる世界が描かれている。お寺がお金にまみれて踊らされていく姿は、あまり信じたくはないが、何でもあったあの時代に、いかにもありそうな話が紡がれていく。読んでいて心地良い内容ではないが、仏教界にもこんな事があったのだろうと思わせる説得力があった。燈念寺はどこの事だろうと考えてしまった。多分あそこでしょう。2024/11/05
PEN-F
32
仏教の世界もより多くの金を掴んだ者が制するのか?京都に本拠地を置く日本最大の仏教宗派と京都の闇社会との深い繋がり。仏の教えさえも金の力が凌駕する。地上げに資金洗浄、暗殺、賄賂に癒着、ヤクザや政財界との裏取引での強固なパイプ。末端のお寺から容赦なく吸い上げる上納金。霞ヶ関も真っ青なほどの闇社会の力。どんな業界であれ、あまりに巨大化した組織では綺麗事だけでは組織を維持していく、ましては繁栄させていくことは困難なのでしょう。一切皆苦(人生は思い通りにならない)。2024/10/27
らくだ
5
日本と京都を代表する大寺院本願寺もとい燈念寺を舞台に、若い僧侶が闇のフィクサーに見込まれて成り上がっていくピカレスクロマン。実際の事件に着想を得たようで週刊誌等でみたような内容が生々しく描かれてます。ヤクザに在日、京都市役所、右翼、政治家と盛りだくさんですが、京都といえばの団体はさすがに書かれてません。京都市役所「地下2階」がいい味だしてます。2024/11/05
manabukimoto
3
「地面師たち」+「アウトレイジ」。腐れ外道の坊主が頂上を目指す。 若き僧侶、凌玄。仏の力で社会をすくう、という純真な心を持つ青年が、ヤクザや朝鮮マフィア、銀行や京都市役所と、時に結託、時に対峙しながら、金を集め、票を集め、宗派の頂点である総貫主に辿り着く。 「すべては御仏の心」というキラーフレーズによって、あらゆることが肯定されていくのが、痛快かつ滑稽。 昭和から平成の京都が舞台。すべては金。執着をも仏教ロジックにより正当化する強欲坊主たちの欲の強さよ。 一気読み。面白かった!2024/10/27