ニューヨーク精神科医の人間図書館

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ニューヨーク精神科医の人間図書館

  • 著者名:ナ・ジョンホ/米津篤八
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 柏書房(2024/09発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
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  • ISBN:9784760155699

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内容説明

「かれらにはわからないさ。
それがどんな気分かなんて」

「誰にでも起こりうることよ」

「結局、“意志”の問題じゃないんですか?」

人種的マイノリティ、統合失調症患者、
ホームレス、トランスジェンダー……
アジア系移民のニューヨーク精神科医として
出会った患者たちの、要約できない人生の断片。

【内容】
デンマークから始まった「人間図書館(Human Library)」では、利用者は「本」ではなく貸し出された「人」と30分程度会話をすることができる。民族的マイノリティ、エイズ患者、移民、統合失調症患者、ホームレス、トランスジェンダー、失業者など、さまざまな人が貴重な時間を貸し出してくれるおかげで、この図書館は維持される。他人に向けられたスティグマ(負の烙印)や偏見を解消し、共存の意味を考え直そうという意図で始まったこのプロジェクトは、いまでは世界80数カ国で進められているという。

大学で心理学を勉強したのち、自殺予防に寄与したいと思い精神科医に転向した著者にとって、この初となる著作は、まさに「人間図書館の書庫の片隅の物語」だ。本編には、メイヨークリニックとニューヨーク大学の研修医を経て、イェール大学で依存症精神科専任医課程を終えるまでに出会った、さまざまな患者が登場する。人種も性別も年齢も職業もジェンダー・アイデンティティも異なるが、共通するのは皆、社会的に脆弱な立場にあるということだ。

“人間図書館で人と人がお互いを知り、触れ合う過程は、精神科医と患者との面接に非常によく似ている。人生において、自分とまったく違う世界を生きている人と会話するようなことがどれだけあるだろうか。(…)私は人間図書館のように、私の患者と他の人の橋渡しをするような本なら、世に出すに値するのではないかと考えるようになった。”
――はしがき

差別、偏見、スティグマを乗り越え、共に生きる一歩を踏み出すために。子どもから大人まで、幅広くお薦めしたいエッセイ集。

目次

はしがき 他人の人生を理解するということ

1 ニューヨークで出会った人々
 ふたりのあいだの距離
 ニューヨークのホームレス、ホームレスのニューヨーク
 あの人がいなくなったことが信じられません
 記憶を共に歩く時間
 ひとりの命を救うということ
 人種的マイノリティの子の親として生きるということ
 アーモンドお婆さん

2 共感するにも努力がいる
 わからないさ、それがどんな気分かなんて
 誰にでも起こりうることだ
 彼女の靴を履いて歩く
 共感と同情、そのあいだのどこか
 共感を超え、苦痛を分かち合うこと

3 スティグマに負けない人生
 研修医の先生がいいです
 双極症は私の一部に過ぎない
 大丈夫じゃなくても大丈夫
 依存症は意志の問題だろうか
 自殺は「極端な選択」ではない
 自殺予防は可能だろうか
 勇気を出してくれてありがとう

あとがき さらば、ニューヨーク
日本語版あとがき ただひとりの勇気のために
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

105
精神科の患者に負の烙印を持つ人は多い。その偏見を減らすための最も効果的な方法は、スティグマの対象となる人と直接会うことである。精神科医の研修医だった頃の著者にとって、ニューヨークで出会った患者たちは、今から振り返ると初恋の人のように忘れられない思い出でいっぱいです。「私が精神科医の仕事で出会った患者一人ひとりが、私にとっては新しい「本」のようだった。その本の中の物語は、時には感動的で、しばしば悲しく、涙が出るほど美しかった。」数多くの感動的なエピソードの中で、患者に共感を示した教授に最も心動かされた。2024/12/18

どんぐり

84
「人間図書館」は、社会的マイノリティの立場にある人々を〈本〉に見立て、参加者が〈読者〉となって対話する活動。この活動はあまり知られてはいないが、本書はイェール大学教授ナ・ジョンホが、研修医時代の精神科患者との出会いを「人間図書館」に準えて著したエッセイ。場所はニューヨークの精神科ER。「ニューヨークのホームレス、ホームレスのニューヨーク」で表されるように、ここを受診する精神障害者は圧倒的にホームレスが多い。社会的マイノリティに対する偏見やスティグマに囚われることは、医療職であっても逃れがたい。→2025/04/09

pohcho

69
NYで精神科医として働く著者のエッセイ。うつ病や統合失調症等の精神疾患の人々、そこには今まで家族から受けた虐待や人種差別、性的マイノリティなどの事情がからみ、著者自身も韓国系移民として多くの差別を受けてきた。自分と何の共通点もない人に共感することは可能か?という問いがテーマの一つになっているのも興味深い。共感と同情の違いについて、子育て経験のない医者が子を持つ母に言った言葉が印象的。同じ経験をしたことがなくても、共感しようと努力することで相手の気持ちも変わる。とてつもなく深い内容なのに読みやすくおすすめ。2025/03/14

kameyomi

26
デンマークで始まった「人間図書館」。ここで無料で借りられるのは本ではなく「人間」だ。日本にもあるのだという。全く知らなかった。人間図書館で様々な立場の人々が触れ合い理解し合う過程が、精神科医と患者の面接に酷似していると、精神科医である筆者は言う。数々の触れ合いの中での気付きを柔らかい筆で示してくれている本書は、私の、精神疾患に対する考え方をかなり変えてくれるものだった。ただ著者の様な医師ばかりではないだろうと考えると、精神医学の限界を感じないでもない。2025/05/17

Mc6ρ助

18
『精神科の患者などの社会的弱者やマイノリティに対する大衆の負の烙印(スティグマ)や偏見を減らすための最も効果的な方法は、スティグマや差別の対象となる集団の構成員と直接会うことである。自分が偏見を抱いている対象が、自分の目の前でかれら自身の意味ある人生を紹介し、共に会話するだけでも、人々は無意識のうちに心に抱いて偏見を消し去ることができるものだ。(p008)』年末、ちょっとだけかも知れないけど心温まるエッセイ、ギスギスして見えるこの世の中だけど前を向いて歩こう。2024/12/25

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