内容説明
優美さに内包する痛み、気高く眩い光を放つ言葉の乱反射。第一歌集『Lilith』から4年、いま最も注目される歌人・作家の第二歌集、ついに刊行!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
39
川野芽生さんの第二歌集。第一歌集が素敵だったけど難解だったので、第二歌集の方がわかりやすくて助かった。独特の詩世界を持つ方。長らく詩や小説を書いてきた方ならではの一首への物語の込め方がある。 花があれば花の病があることを心あるところに肉体は/モノクロの映画を観むと闇に入る喪服の色の裳裾を曳きて/窓の辺に座しいつまでも見ておれば正気より身を護る術なし/はりぼてのお城に集ひ復習の謀(はかりごと)するごとくはなやぐ/いかなる神の前へもこの姿でゆくよ。海のフリルが白さを増して2024/07/30
練りようかん
13
第二歌集。凍星や変若水という言葉が目の奥に残り、厳しい寒さの空や奈良の月を見上げる感覚、イスタンブールやプラハ城など海外に立っている感覚、白居易の訳詩集や「おとうとの語彙」に命の舟が進む感覚を抱き、色々なところに意識が運ばれる楽しさがあった。特に好きなのは“祝祭は尽きぬ泉にあらねども花冠を食む子馬たち”で花冠が果敢になるダブルミーニングの画が浮かび、“スノードームの雪が降り止むように世は消え音のないスタッフロール”の転じる発想力が良い、透明感のある情景が素敵だ。そしてオフィーリアの一首に胸が熱くなった。2025/12/17
ゆう
13
よかった。おとなのアリス連作が収められていて嬉しかった。幻想的だが写実的な歌が多く、葛原妙子の写実的な歌が反写実として評価されたことを思い出した。例えば「太陽の菌糸に搦め捕られたる少年、銀の珠を噴き出し」は山尾悠子「パラス・アテネ」の土地神や狼領の人々を思い出させるが(私だからか)、実際はなんのことはない、太陽の光線に灼かれた肌に汗が浮きだす情景のこと。幻想的な作品も半分くらい収録されているが、川野芽生の現実に根を下ろしながらも夢見るような歌が好きだ。第一歌集『Lilith』をもう一度読んでみよう。2024/09/01
元気伊勢子
8
自分には持っていない感性で新鮮。ジャケ買いして正解だった。とても良い刺激になった。2025/01/29
ハルト
7
読了:◎ 好きな作家さんの歌集。まずタイトルにドキリとする。どんな短歌が納められているのだろう。読み始めると、高貴な薔薇の香が漂うよう。少女としての死に近くて遠い不完全な脆さが、紐解かれていく。女であること少女であること人間であること。秘められつつあったものが曝け出されていく様は、美しくもありまた残酷でもある。読んで、宝箱の蓋をそっと開け放ったかのような感動があった。無機質でありながら、光のように柔らかい。星は星でいなければならない、無常な在り方が天にはある。刃の煌めきを零したような歌集だと思った。2024/10/14
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