内容説明
動物の言葉が分かる美苑は、植物学者で大学教授の父と、厳格な華道師範である母親と住む家の中庭やアトリエで、生き物たちの言葉に耳を傾けるのが日課だった。一方、学校では人付き合いが苦手で「空気が読めない」子として回りから距離を取られていた。ある日、目覚めると、前日まで元気だった父が急逝した事実を知らされる。そんな美苑に声を掛けたのは、父の同僚である児玉先生。大学の植物園で飼育されている子供のグリーンイグアナを育てないかと美苑に提案する。そして14年間、「ソノ」と名付けられたイグアナと共にアトリエで暮らし、充分満たされた生活を送っていたのだが、突然母から呼び出され、驚愕の通告を受ける。母の体に癌が見つかり余命は恐らく半年。その半年の間に結婚せよと言われ……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
59
どうかしてしまったのかと自分でも思っている。だけどとまらない涙…冷静になることすら惜しい気がして思いのままに号泣している。それでも今すぐに、この湧いて出たばかりの鮮度の高い感情を残しておきたくてキーボードを叩いている。まさかイグアナ“ソノ”の感情がここまで深々と胸に刺さるとは想像もしていなかった。不意を突かれたとはこういうことを云うのだろう。幼い頃から一部の生き物の声を聞くことができた美苑の脱皮。人に対してはとても臆病で、それに慣れて大人になってしまった自由と劣等感が心に同居している彼女の脱皮を見守った。2024/10/12
tetsubun1000mg
38
初読みの作家さんだったが、タイトルと帯に惹かれて選ぶ。 人付き合いが苦手で友達もいない美苑が主役。 カエルやへびの言葉が聞こえてくる事から、父親の友達の大学の先生からイグアナの子供の飼育を任される。 不思議な設定だがファンタジーではなく、美苑の心の動きをひたすら描いていた。 イグアナにしか心を開いてこなかった少女が大学院生になり、華道家の母親に師事する女性や同級生との付き合いから変わり始めていく。 人より動物が好きだった少女の成長物語だったような気がする。 美苑の周りの人たちが優しく見守ってくれていた。2024/11/12
Karl Heintz Schneider
36
美苑は幼少時より生き物の声が聞こえる。声が音として聞こえるのではなく脳に直接届く感じ。「聞こえる」というより「感じる」の方が正しいかも。ファンタジーでありながら人間とその他の生き物との関係性を考えさせられた。「ヘンな生きもの」蛇の放ったひとことが忘れられない。瀕死の重傷を負った蛇を安全な場所へ連れてゆき、治療して餌も与える美苑。弱肉強食の自然界では怪我をして動けなくなったら、それは即他の生き物のエサになるのが必定。何のメリットもないのに蛇を助けた人間は蛇の目からしたら、さぞかし「ヘン」に思えたのだろう。2024/12/25
空のかなた
24
想像のつかないタイトルだったけれど、イケガミヨリユキさんの装画に妙に惹かれて読む。主人公の美宛(みその)は人とのコミュニケーションは苦手なのか、パーソナルスペースがとても大切なように感じる。華道家の母上はとても厳格で褒めて貰った記憶もないし、微笑んだ表情の記憶もない。亡くなったお父さんが所有地の離れに作った小屋(アトリエ?)でイグアナのソノと穏やかに暮らしている。美苑は小さい生き物たちの言葉を聞き取り話すことができる。注意していないと聞き漏らしてしまうような密やかな声を。胸に染み入るような丁寧な一冊。2025/02/15
信兵衛
19
ファンタジー要素と、えらく現代的な問題とを取り合わせたストーリィ。 要は、コミュニケーション問題がテーマのようです。 人とのコミュニケーションが苦手、コミュ障といった話は、子どもたち世代から学生、社会人世代まで、今や広く存在する問題だと思います。2024/10/11
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