内容説明
ものごとを瞬時に判断すれば、膨大なエネルギーを消費する脳を活動させるコストは最小限で済む。そのためわたしたちヒトは進化の過程で、面倒な思考を「不快」と感じ、直感的な思考に「快感」を覚えるようになった。すべての対立を善悪二元論に還元することは、いわばヒトの“デフォルト”だ。ところが現代社会では、簡単な問題はすでにあらかた解決されている。いまを生きるわたしたちが対処を迫られるのは、対立する当事者がいずれも「善」を主張し、第三者には単純に判断できないような【DD】的な問題なのだ。
面倒な問題をまともに議論する気のないメディアへの信頼感が失われ、SNSではそれぞれが交わることのない「真実」や「正義」を掲げる。――そんな世の中ではとかく嫌われがちな、しかしそんな世の中にこそ必要なはずの【DD】な思考から、日本や世界がいま抱えている社会問題に鋭く斬り込む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
171
善悪二元論が蔓延る現代に、DD(どっちもどっち)視点で、ロシアvsウクライナ、イスラエルvsハマス、ドイツと日本の犠牲者意識ナショナリズムを読み解く。個人や集団、国家や民族、宗教の複雑な利害が絡み合うこの世界は本質的にDDと言えそうです。メディアにとって正義は他人(権力)を批判する道具で、報道とは読者を先導してお金を稼ぐビジネスだとしたら、このポリコレの時代にどこにも真実はなくなってしまうと切って捨てます。2025/05/09
tamami
69
『DD(どっちもどっち)論』という書名は秀逸。以前読んだ橘さんの著作に比べ本書はスルスルと読め、面白くかつ有意義な読書になった。ウクライナの「正義」」のゆらぎ。犠牲者意識ナショナリズム。憎悪の応酬を解決する方法は「忘却」。抑圧による平和か、戦争か。「スター・ウォーズ」はなぜあのような終わり方だったのか。ひとは自分の行動を合理的に説明できるか?etc.テーマを見るだけで興味を惹かれる記事が目白押しである。様々な組織や世代が論難される中で、公正・中立を標榜するメデイアのあり方が強く問われているのが印象に残る。2024/11/21
かんらんしゃ🎡
45
争いを収める為、あるいは深入りしたくない時に「どっちもどっちだよ」と言ってしまう事がある。でもそれじゃなんの解決にもならない。おめー、どっちの味方だよと言われるのがオチだ。ロシアにも言い分、原爆にも言い分。安楽死や死刑廃止、9条も。でもこの本は解決への道筋を示さない。そもそもDDに最適解など無く中庸中道は機嫌取りにしかならない。だったらもうここは自身の基盤に立ち、自分の意見をガツンと言ってやるしかない。かくしてオレはますます火に油を注ぐことになる。知ーらね。 2024/10/26
ひと
38
視点や立場が変われば正義も変わることを、戦争や殺人事件、戸籍、いじめ、ジャニーズ問題などの多様な事例を上げながら示してくれています。善悪二元論とDD(どっちもどっち)論、興味深く読みました。これらもどちらが正解っというわけではなさそうで、善悪二元論による思考停止の怖さとDD論による解決策提示の難しさを実感しました。橘さんは、どちらがいいということよりも、事実を伏せたまま大衆を煽るメディアの不誠実さへの怒りと変革への祈りに近い期待を訴えているのかもしれません。自分で考えることの大変さを受け入れます。2025/02/28
特盛
26
評価3.2/5。世の中にはドッチもドッチ、ということで2元論で善悪決められない問題がある。本書では二元論化した社会問題の-の肩を持つ、という論調で様々な社会記事が取り上げられる。ガザ・パレスチナ問題については、「忘却」しか解がないかもしれないと著者は言う。いや、当事者には忘却なんて難しいと考えたら、解決できない問題というのが確かにあるのだなと思う。著者は覆面作家だが、現実は顔が見える世界。SNSは地獄、と別の本でも言っていた。沈黙は金だ。だが黙っていると力の勝負になるんだよなぁ世の中。2025/01/23
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