文春e-book<br> 一場の夢と消え

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文春e-book
一場の夢と消え

  • 著者名:松井今朝子【著】
  • 価格 ¥2,400(本体¥2,182)
  • 文藝春秋(2024/08発売)
  • ポイント 21pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784163918877

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内容説明

『曾根崎心中』『国性爺合戦』など、
数多の名作を生んだ日本史上最高のストーリーテラー・近松門左衛門。
創作に生涯を賭した感動の物語。

越前の武家に生まれた杉森信盛は浪人をして、京に上っていた。
後の大劇作家は京の都で魅力的な役者や女たちと出会い、
いつしか芸の道を歩み出すことに。
竹本義太夫や坂田藤十郎との出会いのなかで
浄瑠璃・歌舞伎に作品を提供するようになり大当たりを出すと、
「近松門左衛門」の名が次第に轟きはじめる。
その頃、大坂で世間を賑わせた心中事件が。事件に触発されて筆を走らせ、
『曽根崎心中』という題で幕の開いた舞台は、異例の大入りを見せるのだが……。


書くことの愉悦と苦悩、男女の業、家族の絆、芸能の栄枯盛衰と自らの老いと死――
芸に生きる者たちの境地を克明に描き切った、近松小説の決定版。

絶賛、続々!

〈実〉を緻密に積み上げ、〈虚〉の世界から情を迸らせる。
読みながら、何度もぞくりとした。
本作は、虚実皮膜のギリギリを攻める近松の浄瑠璃と地続きにある。
――平松洋子

生真面目で切なくて、色っぽい。虚と実の間に立ち昇る、
近松の真実(リアル)。圧巻の芸道小説だ。
――朝井まかて

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

143
文学者の生涯をテーマにした小説やドラマは多いが、人生の労苦を経て作家として成長し名作を生むまでを描くのが主流だ。その点、本書で描かれる近松門左衛門は波乱万丈には縁遠い受動的な人間で、逆に周囲のやらかしに巻き込まれて生きるために必死で頑張っていると、思いがけず浄瑠璃作者の才が開花していく。『光る君へ』や『八犬伝』のように悩みながら執筆するシーンはなく、題材を得たらするすると書けてしまう。一方で近松をハブとして多くの人生が思わぬ方向へ回っていき、彼らに一場の夢を与えたと悟る終幕は芸と心中したかと思えてしまう。2024/10/25

trazom

109
近松門左衛門が登場する小説は数多いが、主人公は記憶がない。近松の生涯以上に、古典芸能への著者の見識に共感する。浄瑠璃の詞章とかぶきの台詞が全く別物というのはその通り。更に「近松の浄瑠璃は、わざと七五・五七の調子を崩すように書いてある」という解釈も同感。小説としては、近松が、「女殺油地獄」の与兵衛に自分の次男を重ね、「心中天網島」のおさんに妻を重ねるというプロットが見事。享保の改革の圧政に苦しむ社会に対して「だから匿名で人を誹ったり足を引っ張るような卑怯な振舞が蔓延る」との一文は、現代社会への警鐘でもある。2024/10/10

のぶ

81
近松門左衛門こと杉森信盛の半生を描いた緻密な作品だった。信盛の戯作者として立つまでの経緯やその後の活躍ぶりを主軸としながら、家族問題、そして当時の浄瑠璃や歌舞伎といった興行界の様子を、さらには当時の社会情勢までをも丁寧に描き出している。近松の生きざまに初めて触れることができたが、ドラマチックな人生という印象は受けないが、一人の人物の人生模様としてじっくり味わい深く読める作品になっている。人形浄瑠璃や歌舞伎に日ごろ触れることがほとんどないため、本書は自分にとって貴重な読書体験だった。2024/09/19

pohcho

63
近松門左衛門の半生の物語。今でも名前の残る稀代の劇作家だけど、天才にありがちな強烈な個性や頑迷さはあまりなく(多少女癖は悪いが)心優しい人物として描かれていた。その分、ドラマチックさには欠けるけど、曽根崎心中、国性爺合戦、心中天網島、女殺油地獄など、有名作品の誕生秘話や当時の上演の様子は興味深かった。特に国性爺合戦が面白そうで一度見てみたい。不肖の息子(次男)も途中どうなることかと思ったけど、いい感じにおさまってよかった。優しい読み心地の作品。2024/09/11

kawa

38
江戸時代の前中期に京・大阪で活躍した歌舞伎・浄瑠璃作者の近松門左衛門が主人公の時代小説。馴染みのない歌舞伎・浄瑠璃の世界の話しで前半は読み切れるかなあの不安もあったが、松井さんの淡々展開ながら巧妙な筋立てにやられ、最後まで切れることなく読了。「江戸の夢びらき」に続いての2作目も著者の力量に脱帽です。零落した丹六大尽と玉鬘太夫の道行き、信盛(近松)の竹本政太夫に対する叱責、妻の多岐と奈加、不肖の子・恵次とのやりとり等、秀逸で印象的場面に目が離せなくなる。2024/11/29

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