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内容説明
薬師寺の僧侶・景戒によって九世紀初頭に編まれた、日本で最初の仏教説話集『日本霊異記』。仏教の教えを説こうとしながらも規範的な思想にはとどまらない、古代人の生き方が投影されている。一寸法師の源流、奪われた衣を取り返す力持ちの女――。上代文学研究の泰斗が、『古事記』『日本書紀』などの神話からの影響や、霊異記以後の伝承とのつながりを読み解く。国の創成期、エネルギーに満ちた人々の姿が鮮やかに蘇る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
13
記紀神話と『今昔物語集』など中世説話をつなぐ存在として『日本霊異記』を読み解く。一連の動物報恩譚から、動物の恩返しを語る説話が日本人の心の優しさを示すというような言説を否定し、そういったものが現れてくるのは仏教の伝来や流布によるものであると再三にわたって論じている。また、討債鬼説話など、中国の説話の影響を受けたものも結構存在するようだ。『今昔物語集』なんかと比べると影が薄い文献だが、手軽な形での訳本が読みたくなってくる。2024/09/07
Ohe Hiroyuki
1
9世紀前半に、正式名「日本国現報善悪霊異記」という本が編纂された。タイトルに「~の世界」とあるように、本書は、「日本霊異記」を用いて、著者が語りたいことを語られているのであり、「日本霊異記」の中身を事細かく触れるものではない。▼もっとも、「一寸法師」や「浦島太郎」など誰もが知っているおとぎ話の原点が本書にあるということを知るだけでも、本書に触れる価値はあるであろう。2024/09/15
細川 カヲル
0
昔も昔、あまりにも遠くて想像するのも難しいような時間かけて現代まで伝わる物語群。この書籍ではそれらから読み取れることを様々な観点から読み解いていく。不思議な要素はあれどどこか日常に根差したかのような雰囲気もあって不思議と当時の考え方を含めた日常生活というモノにも考えが及んでしまう奇妙さがある。 物語として分析することによって、昔話に似た、或いは源流となったような様相も浮き彫りとなり、昔話の普遍性について再認識させられる。普段耳慣れない古典と普遍さのギャップは時折滅多にない形の刺激にもなった。2025/03/03