内容説明
心の哲学の基本文献となっている表題作のほか、現代哲学・倫理学に新たな問題圏を切り拓いた有名論文を複数収録。死、性、戦争、意識など、人間の生にかかわる多様な問いを明晰に論じる。新装版では「道徳における運の問題」について古田徹也が、「コウモリであるとはどのようなことか」について訳者永井均が書き下ろした解説を新たに収録。
目次
序 文
1 死
2 人生の無意味さ
3 道徳における運の問題
4 性的倒錯
5 戦争と大量虐殺
6 公的行為における無慈悲さ
7 優先政策
8 平 等
9 価値の分裂
10 生物学の埒外にある倫理学
11 大脳分離と意識の統一
12 コウモリであるとはどのようなことか
13 汎心論
14 主観的と客観的
第一版への訳者あとがき
「内側」と「外側」に引き裂かれる観点[古田徹也]
――新装版への解説(1)「道徳における運の問題」
コウモリであることがそのようにあることであるようなそのような何かは存在するだろうか[永井 均]
――新装版への解説(2)「コウモリであるとはどのようなことか」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
22
哲学論文集。以前表題作をアンソロジーで読んで面白かったので。でも、別訳か。テーマが死、生の無意味、性的倒錯なら興味深く読める。たとえ、思考の前提や結論に賛成できなくても、考えることの楽しさがあるから。しかし、話が優先政策や平等など社会的になってくるとすぐに退屈してしまうのは、自分が年の取り甲斐もなく公共心ゼロだからではないのか。還元不可能な主観性にこだわる著者は、統合情報理論をどう受け止めたのかな。コウモリであることのクオリアは、決して人間にはわからない。ラストの『主観と客観』が白眉。2024/12/28
いとう・しんご
10
リクールきっかけ。旧装版の方にもたくさんレヴューがあるのでご参照ください。全体の3分の1当たりで途中放棄。普段、途中放棄はここに書かないのだけど、後から読む方のために放棄理由を書いておきます。非常に軽妙洒脱な文章である意味、読みやすいのですが第二章の終わりの「自分の無意味な人生に・・・アイロニーをもって取りくめば良い」と言う言葉で道徳的虚無性が明確になって、アイヒマンもトルーマンも立場上昇がなかったのではないか、と言い出す始末。彼の導きとなるのは「道徳的直感」という言葉なのだけれど、→2024/07/31
チェアー
7
歯が立たなかった。「大脳分離と意識の統一」は面白そうな議論だった。身体の左右で違う認識と行動をしている時、それは意識が2つあると言ってよいかという議論。結論よりも、そのように問いを立てて考えることの大切さを思う。2024/03/01