哀しいカフェのバラード

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哀しいカフェのバラード

  • ISBN:9784105071820

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内容説明

さびれた南部の町で暮らすアミーリアは、言い寄る男に見向きもせず、独身で日用品店を営んでいる。ある日彼女のもとに背中の曲がった小汚い男が現われた。町中が噂するなか、どういうわけか彼女はこの小男に惚れこみ、同居してカフェを始める。そこにアミーリアの元夫が刑務所を出て帰還。奇妙な三角関係の行方は――。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

96
村上春樹訳・山本容子:銅版画の中編本。カーソン・マッカラーズは、いずれも村上春樹訳の「心は孤独な狩人」「結婚式のメンバー」を読みました。本書は、1950年代のアメリカの乾いた、暴力の渦巻く、うらぶれた街に起こる、どこにも行き着くことのない絶望的な物語です。「愛するもの」と「愛されるもの」とのすれ違いが、ミス・アミーリアとマーヴィン・メーシーとに起こったことであり、せむしはそこに介在して、その関係に作用したことになる。あくまで外から人物を描写するだけで、登場人物の心情は示されることはない。2024/11/03

ぐうぐう

36
とても奇妙で歪な小説だ。それでいて、ひたすら真っ直ぐな小説のようにも思えてくる。一人でいることを好む男勝りのミス・アミーリアは、町にやってきたせむしのカズン・ライモンと出会い、惹かれ合い、同居を始め、一緒にカフェを営むようになる。それぞれ闇を抱えた二人の邂逅は、カーソン・マッカラーズの小説を読んできた読者にとって、小さな希望の灯火だと信じられる。しかし、本作におけるマッカラーズはそうではない。その灯をためらいもせず、吹き消してしまうのだ。(つづく)2024/10/04

田中

29
マッカラーズ短編集(ちくま文庫)に収録されている「悲しき酒場の唄」(西田実訳)と同じ作品。村上春樹訳はもの哀しく叙情的な作風だろう。読み比べて欲しい。挿画もあるためよりイメージが膨らみ、アミーリアの男まさりの無骨さや、せむしのカズン・ライモンの異形さが強く作用してくるのだ。アミーリアは、「愛されるもの」の耐えがたさをよく知っている。つまり、負担なのだ。彼女は、天性の「愛するもの」で、庇護欲が深い愛情に昇華したのかもしれない。だからこそ失望と魂の喪失が痛々しい。「愛するもの」になりたがるのは普遍的である。 2024/10/26

キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん

23
もの悲しい洒落たタイトルとは全然ちがう、復讐と暴力と悪意にみちみちたお話。愛するものに極端に惜しみなく注ぐ忠節や、愛するものの為にものすごく残酷になれる事や、カフェのあり方や、どうしようもなく壊れてしまった人間の末路など、どうしてこうも極端すぎる人たち。主人公のミス・アミーリアのせむし男への愛情は、扱いにくい猫と暮らした人ならわかるだろう。悪戯されようが冷たくされようが、飼い猫をネコ可愛がりする飼い主はいるものだ。そこが何となく哀れで、その潔さに納得して、その悲しみも理解できる気がして、良い作品だった。2025/05/05

くさてる

21
山本容子の銅版画と村上春樹の翻訳文が素晴らしい。両者によって表現された閉ざされたひとつの世界はあまりに救われないものだし、時代的な醜さも感じるのだけど。フラナリー・オコナーの短編を連想した。2025/02/24

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