内容説明
なぜ、セックスワーカーが差別されるのか。なぜ、法によってセックスワークを規制するのか。どうしたら人権侵害をなくせるのか。より良い支援のためには、なにが必要なのか・・・性風俗や性売買にまつわるステレオタイプをくつがえし、当事者視点で大胆に問いを立て直す。セックスワーカー当事者と研究者・支援者・ライターたちが協働で書き上げた、性と人権を学ぶ人に必携の一冊。世間ではあまり知られていない、セクシュアルマイノリティのセックスワークについての記述も多数。日本の性風俗年表、性風俗産業構成表など、巻末付録も充実!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
33
「自分はやりたくない仕事」「尊厳をドブに捨てるようなもの」と感じるのは自由だが、それは個人の道徳観で、万人に強いる筋合いのものではない。貧困のはてに意志に反して働かされる「かわいそうな」事例ばかりが強調されて誤解を生んでいるし、自己責任だから性病になってもしようがないというのも冷酷な議論。慰安婦問題でもそうだが、強制か否か、はっきり線引きできるものだろうか。我々の日常の多くの選択がそうであるように、強制と自発のあいだにはグラデーションがあり、むしろどちらでもない中動態的な行為の方が多いのではないか2020/08/17
キョートマン
14
ほとんど反射的ともいえるこの手の分野への軽蔑感は一体どこから湧くものなんだろうか?それをどうにかしないことには、この本で目指してるような社会的認知は獲得できないと思う。2021/08/20
kri
9
性風俗産業に従事する様々な人たちを労働者として捉えたとき当然守られて然るべき「安全・健康」などが適用されていない。別の世界の存在として認識しているからだ。発生する被害は全て自己責任であるかのように。風俗に足を踏み入れた人を取り上げても貧困問題だけにスポットが当たり、その労働環境を問題視することはない。どんなトラブルや改善点があるのかを具体的例を挙げて書いていて、勉強になった。女性の性の〈商品化〉という視点から根絶すべきでは?と思ってきたが、もっと複雑な議論が必要だと考えさせられた。日本評論社がんばってる!2019/10/15
もてぃ
7
全く知らない関わったこともない生業の当事者や支援者が様々な視点からセックスワークについて語っていて、こう言って良いのか分からないが面白かった。他の産業で健康被害が発生した場合は労災として認定して再発防止のための法律やシステムが制定される(あるいは理想的にはそうすべきとされる)のに、セックスワークの場合一足飛びに廃業論に向かうのは確かにおかしい。そこには性的なことは親密な相手と自宅のベッドで行うべきというイデオロギーや、性的なことをサービスとして売ることに対するタブー視などが存在する。 2021/06/05
おでんのたまご
7
「貧困女子」とタイトルにつくルポ本を何冊か読んで、悲惨な現場で働く人たちを知った。さらに当事者はどう考えているのか、何が必要なのか具体的に知りたくてこの本を手に取った。先に読んだ本とはまた違う現実がそこにはあった。働いている事情も仕事に対する捉え方もさまざまで、でもそれって他の仕事でもそうだよね。その仕事が存在してる限り、そこで働く人の安心安全が保障されるようになるべき。2021/03/12




