内容説明
YouTubeで大人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌も相まって、番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると意外な過去が見えてきて……。デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新たな社会派小説。
目次
ブレイクニュース
巣立ち
嫌疑不十分
最後の一滴
憎悪の種
正義の指
ハッシュタグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
201
現代の問題が多数の社会派小説。YouTubeできわどい投稿を続ける「ブレイクニュース」。物事は片方だけでなく反対側からも見る必要があるが片方だけ見て知った風に意見する人がSNS上、いやリアル社会でもいる。誹謗中傷しなくても噂話や冷徹な目線で相手は気づく。それが極端になると死に追いやることにもなる。多方面から物事を見て真実を知ってから話すようにしたい。「「自分が強いから、優秀だから、人を差別するわけじゃない。自分が弱いから、無能ではないかと怯えているから、人を差別する心が生まれるんじゃないかしら。(略)」」2025/03/16
イアン
138
★★★★★★★☆☆☆現代社会が抱える闇を扱った薬丸岳の連作短編集。美人ジャーナリスト・野依美鈴が企画・出演するユーチューブチャンネル「ブレイクニュース」。炎上すれすれの際どい取材で、冤罪・8050問題・パパ活・ヘイトスピーチなどの当事者に切り込んでいく。テレビや新聞などの既存メディアでは立ち入れない領域に踏み込む美鈴の姿勢は痛快に映る一方で、その胸に秘めたジャーナリズムの原点には昏い過去が横たわっていた…。何が美鈴を突き動かすのか。本作を読み終えた今思うのは、匿名だから許される悪意は存在しないということ。2024/12/27
となりのトウシロウ
89
「ブレイクニュース」ジャーナリストを名乗る野依美鈴が独自取材しYouTubeの人気チャンネル。児童虐待、中年の引きこもり(8050問題)、嫌疑不十分で不起訴になった冤罪、パパ活、ヘイトスピーチなどの社会問題にネット配信という武器で切り込む。時に個人への誹謗中傷を生むSNS。そんな負の側面が描かれるが、既存メディアが扱えないテーマを扱う新しいメディアとしての側面も。『人に刃を向ける者は、いつか自分にもその刃が返ってくることになる』自分の言葉に責任を持てと言われている気がする。現代社会を鋭く描いた良作。2025/07/06
H!deking
76
いやー今回も楽しませて頂きました。人気YouTubeチャンネル、ブレイクニュースにまつわる悲喜こもごもですね。面白かったことには間違いないのですが、少しだけ一昔前感が気になると言えば気になります。が連載開始は2018年だったんですね。こういう、今を斬るみたいな作品は鮮度が大事ですね。逆に言うとこの数年でSNSとかも目まぐるしく変わってるんだなー。2024/09/09
はにこ
73
興味深い内容だった。ネットの闇を感じるね。そんな闇を深く掘っていくブレイクニュース。今の世の中で問題になっていることがテーマになっていた。誰か一方の味方ではなく、平等に真実に迫る。始めはなりふりかまわず取材しているのかと思い、嫌な奴だと思ったけど、その思いの深さに脱帽。また、美鈴がブレイクニュースを始めたきっかけにも驚かされた。映像向きの作品かも。観てみたいな。2025/05/03