内容説明
生きる理由に解答がありえないように、書く行為にも理由などあるはずがない――。長年、内面を明かさなかった作家が明かしたその思想。1980年代に語られた言葉の数々は、今なお社会の本質を射抜き、我々への啓示へと変貌する。国家、言語、儀式、芸術、科学、果たして安部公房は何を考えていたのか。エッセイ、インタビュー、日記など多様な表現を通して、世界的作家の隠された素顔に迫る。(解説・養老孟司、鳥羽耕史)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
61
動物も赤ちゃんも泣き声は感情表現。その詳細意図は理解できないが、何か不満や欲求を伝えているのは判る。おむつが不快?おっぱいが欲しい?泣きは生命維持の基本の表現なのだろう。やがて人間は脳遺伝子のスイッチONと共に親の会話、感情表現から言葉を理解してくる。言葉は感情のデジタル化だ。感情は満たされれば消滅してしまうが、この言葉のおかげで意思を残す事が可能になった。過去という時間を手に入れたのだ。言葉は書になり、過去を踏み台にして現在があり、過去を知るものが長となり人間の集団は社会性を帯びてくる。2024/10/15
モトラッド
44
★★★★安部公房は、1980年4月から、元箱根の山荘を仕事場兼住居にしたが、『死に急ぐ鯨たち』も『もぐら日記』も、そこに据えたワープロのフロッピーディスクに残されたもの。『方舟さくら丸』の自作解説でもあり、『飛ぶ男』の構想と執筆過程も垣間見える。「錨なき方舟の時代」と題したインタビューが、特に興味深い。聞き手が上手で、興がのった安部氏の肉声が聞こえて来るようだ。これだけで正味138頁もある。インタビュアー故栗坪良樹氏のお手柄と思う。自らの周辺を見せたがらなかった安部が僅かに残した、稀有な評論集である。2024/10/02
優希
42
安部公房の言葉の数々の力を感じます。社会の隠された核心を突き、21世紀の今の私たちに啓示へと変化する。ノーベル賞候補にもなった世界的作家の言葉は、多様な表現でその思想を深く掘り下げているように思いました。貴重な発言の数々が安部公房という作家の深淵を表現しているのではないでしょうか。2024/09/04
踊る猫
37
「知の巨人」とはこうした作家ではないだろうか。さまざまな外部の事象に触れ、それを全身全霊を込めてダイレクトに受容し自らの中で論理的にとらえ直し、そして分析・解析を開始する。その作業が生み出した結果としてここで語られているインタビューや日記・エッセイといった言葉たちは実に明晰である。興味深いのはそのどこまでも明晰な言葉が語られれば語られるほど激しく脱線していき、目まぐるしく話題をズラして暴走していくことだ。鋭敏すぎる知性ゆえの椿事なのか? その体質はどこか、安部公房が敬愛していたカフカにも通じるものを感じる2024/08/31
Tenouji
22
以前『砂の女』か『箱男』を読んで、合わない、と感じた記憶があるのですが、雑文は、すこぶる良いですねw。権力と言語に関する考察が、このAI時代には、よくマッチする内容です。また、論理とイメージを混ぜて論じてるのも良いです。楕円構造は数学的で、ループが閉じたり開いたりイメージは、分子生物学が与えてくれる恩恵なんですよね。そこに言語の儀式化を持ってくるあたりが、この時代の視点としては非常に驚きを禁じえません。2024/12/14
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