内容説明
「いいなあ、幸せそうで」
スーパーを訪れる5編の「生活」。
寿退社をして主婦となり、子どもが手を離れた美奈子。社会に出て働こうと思い立つが、転職活動は思うようにいかない。
(「おしゃべりなレジ係」)
小学生の頃からのある癖によって痩せた、大学生の流花。しかし「ぶた」と呼ばれて受け流してしまった当時の自分を未だに許せない。
(「小さな左手」)
元彼女に二股をかけられて以来、マッチングアプリで遊ぶようになった亮。ある日会社の後輩から、SNSで自分がヤリモクの要注意人物として晒されていると知らされる。
(「気をつけてください!」)
友達の結婚ラッシュに焦り、婚活アプリで出会った貴文と結婚した咲希。出産した友達に「次は咲希の番だね」と言われ、咲希も妊活を始める。
(「なわとびの入り方」)
IT化についていけず、早期退職した哲郎。ハローワークで再就職先を見つけられず、妻にも愛想をつかされ、公園のベンチで昼食をとる日々が続く。
(「不機嫌おじさん」)
「もう無理かもしれない」そんな気持ちを真下みことは掬い上げ、寄り添い、抱きしめてくれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
itica
79
専業主婦だった美奈子が20年ぶりにスーパーの「おしゃべりレジ」で働くことになった。慣れないながらも客に話しかけながら笑顔を見せる美奈子と、「おしゃべりレジ」を訪れた客の抱えているものにスポットを当てる短編集。コロナで他人との会話が格段に減った。何気ない言葉のやり取りは人間関係の潤滑油であり、ちょっとした会話に気持ちが救われるってこともありそうだ。マニュアル化したコンビニとは対極にあるおしゃべりレジ、お年寄りには良いかもしれないな。 2024/08/24
Ikutan
75
いいですね。「おしゃべりレジ」。「セルフレジ」で戸惑ってる高齢者の見守りも兼ねたコミュニケーション重視のこのレジ。「専業主婦って無職」というSNSに疑問を持った美奈子さんが始めたパートの仕事。美奈子さんと彼女のレジにやって来たお客さん、それぞれ五つのお話。お客さんは、高齢者だけではなく様々な年齢層の男女。過去のいじめで拒食症になった女性。マッチングアプリにはまるリーマン。周りに流され妊娠出産に焦る女性。リストラおじさん。何処にでも居そうな人たちに焦点を当てた内容でサクサクと読みやすい。エピローグもいいね。2024/10/23
花ママ
61
普通の人々、でもいずれも覚えがあるような悩みや焦燥。それぞれの話の主人公たちに親近感を持てました。サクサク読了。2024/10/27
ひめか*
59
主婦が転職しておしゃべりなレジ係になる話から始まり、子供の頃容姿でいじめられていた流花、マッチングアプリで適当に女子を見つけて遊ぶ亮、子どもができずに自分を追い詰めてしまう咲希、家庭でも職場でも横柄な態度で無職になってしまった哲郎と視点が変わっていく。こんな世間話をするレジ係の人は見たことがないかも。声の掛け方が上手で仕事向いているなと思う。不機嫌なおじさんが買い物を覚える場面微笑ましかった。章扉のイラスト、カゴに入れたものにその人の生活感が現れていて面白い。みんな少しずつ前を向くほんわかしたお話だった。2024/11/01
ヒデミン@もも
55
新刊が気になる真下みことさん、4冊目。これは今までとは、ちと違う作風。ちょっと不思議ちゃんで現実的でない印象が強かったが、これは老若男女が主人公で超現実的。『いいなあ、幸せそうで』って、隣の芝生は青いのよ。おしゃべりなレジ係の美奈子は世間知らずで主婦をバカにされてるように感じてちょっと不愉快。お客様を見守る目線は主婦ならではなもの。こんな大人になった真下ワールドもいいね。2024/09/23