内容説明
母親の「私」と自殺してまもない16歳の息子との会話で進められる物語。著者の実体験をもとに書かれた本書からは、母親の深い悲しみが伝わり、強く心を打つ。他に類をみない秀逸な一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
小太郎
41
「千年の祈り」のイーユン・リーが息子を自死で亡くした後に書いた本。作者の頭の中で亡くした息子との会話がメイン。近視眼的な会話、言葉に対する執着、息子との色々な思い出が取り留めもなく語られて最初はとても読み難い。近しい人が亡くなった喪失感はその人自身にしか分からないものだと思います。それを彼女は小説と言う形を借りて独白しているのだと思います。そして読み進める内に物語の中で通奏低音の様な彼女の悲しみがこちらの心に響いてきてしまう稀有な小説でした。彼女の言葉に対する強い思いが伝わってきました。 ★42024/07/23
くさてる
18
亡くなった長男とのどこでもない空間でのとりとめのない会話が綴られる。ずっと細かい霧が広がっているような曖昧さと冷たさ、晴れることが無い悲しみの空気のなかくりかえされる、ねえ覚えてる? あのとき、あのころ、ああだったねという確認のような、思い出のやりとり。読んでいるだけでも苦しい、個人的なセラピーのような作品だった。2025/12/19
みき
11
自殺した息子と話をする母親の話。息子のすこし生意気な態度が、本当に今突然死んでしまった人の話であると感じられる。悲しみというよりは、衝撃のなかにまだ取り残された人が、生々しく思い出している。2025/02/11
kankoto
7
自死した16歳の息子との対話と言う形式をとった作品。母親はある場所で、亡くなった息子と会話を重ねる。ある場所は彼女の中にあり、2人の会話ももちろん彼女が作り出したもの。それでも息子の話す言葉は若いティーンエイジャーの透明さとひねくれ具合もあり、その言葉に母親は対抗する。反発し合いながらも言葉が2人を繋ぐものなのだ。作家である母親はこうすることが必要で、そしてこうすることしかできなかったのではないのか。2025/04/13
hiroko
6
16歳で自死した息子と母親との対話。今ふたりは言葉を通じてのみ繋がり、境界を分かち合う。それなのに言葉は不完全で、互いに文章を書く親子はふとしたことで意見を交わし合い口論にもなる。後悔や悲しみばかりが前面にあるのではなく、まさに繰り広げられているような会話を追ううちに心が治癒していくような感覚になり、それでいて時折心を抉られるようでもあった。著者は同じ経験をされており、息子さんの死後数週間でこの小説を書いたそう。本を読み、書き、喪失感と向き合うしなやかな強さに心を打たれた。2026/01/18




