内容説明
人気ミュージカル『エリザベート』に狂言回しとして登場するルイジ・ルキーニ。実在した彼は、19世紀末に孤児として生まれ、10代から職を転々とする。やがて無政府主義に傾倒、25歳の時にオーストリア皇妃を暗殺した。本書はルキーニが11年にわたる獄中生活で記した回顧録に加え、当時の公文書から暗殺事件の詳細や、逮捕当日から10回以上にわたる尋問、裁判での証言、手紙などから、真実の姿に迫る。ミュージカル『エリザベート』がより深く理解できる必読の書。俳優・成河(ソンハ)さん推薦。
目次
ルキーニ関連地図
訳者による解説
第1章 ルキーニ回顧録
読者へ
序文――実の両親について知っていること
第一部――少年時代の思い出
第2章 その後のルキーニ
遍歴
兵役
無政府主義の洗礼
標的
第3章 暗殺事件
事件当日
尋問
九月一〇日の尋問
九月一一日の尋問
九月一二日の尋問
九月一三日の尋問
九月一四日の尋問
九月一五日の尋問
九月一六日の尋問
九月一九日の尋問
九月二六日の尋問
一〇月三日の尋問
一〇月四日の尋問
裁判
第4章 不審死
獄中生活
不審死
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
110
「暗殺する者は暗殺したことによってのみ歴史に名を残す」(銀英伝)のなら、ルイジ・ルキーニはその典型だろう。カネ目当ての里親に引き取られ辛い幼少年期を過ごした私生児が、底辺労働者として欧州各地を放浪する生活の中で社会への復讐心を抱いたのも当然だった。自分はこんな無意味な人生を送るために生まれたのではないという怒りが、歴史に名を残したいとの妄執を生んだ。そのためなら誰でもよかったが、たまたま好機を得た皇妃エリザベートを狙ったのだ。そんな「無敵の人」がミュージカルの準主役にまでなれたのだから、もって瞑すべきか。2024/09/15
お抹茶
1
ルイジ・ルキーニ自らが獄中で書いた,暗く貧しい少年期を記した回顧録から始まり,その後の人生の解説を挟み,予審判事による尋問で構成される。回顧録は読みにくい文章だが,結審後に書かれた手紙にある「一人の人間としてまともに暮らせる機会を与えられていれば私は満足したでしょう」という言葉に納得するほどの孤児の悲哀。しかし,強い忍耐力で過酷な運命を甘受した。ルキーニとしては決して精神異常による暗殺ではなかったということを示したかった。不審な獄死はなお謎を呼ぶ。2024/10/05
スガミ
1
ミュージカル「エリザベート」の中で、一番好きな登場人物。だけど、詳しいことは何も知らなかった彼。なんとなく想像していたより遥かに辛いことの多い人生に、何度も「この子が何をしたって言うの」と叫びたくなった。彼が凶行に及ぶ前に、何か(国や教会といった公的なものでも、もっと私的なものでも)や誰か(どうしてモニチ夫妻……と思ってしまうし、他にも親しくしていた人々)が、歯止めにならなかったのか。牢獄の中で取り返すように書に耽り、ついには回顧録を書くまでにいたったルキーニとその顛末を思うとあまりにも辛い。2024/05/29