内容説明
フランス社会の書記として,社会の全体を写し取る――長短九十の小説から成る「人間喜劇」の壮大な構想を,作家みずから述べた「総序」は,近代文学の重要なマニフェスト.その詩的応用編として,『金色の眼の娘』を併収.植民地生まれの美少女と非情な伊達男の恋は,黄金と快楽,人種と性の交差の中でどこへ向かうのか?
目次
パリ市内図(一八二三年)
「人間喜劇」総序
金色の眼の娘
「総序」挿絵説明
訳 注
訳者あとがき
「人間喜劇」カタログ一八四五年
オノレ・ド・バルザック略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テイネハイランド
16
図書館本。「人間喜劇」総序と中編小説「金色の眼の娘」が収録されています。前に読んだ岩波文庫版「サラジーヌ」でも思いましたが、本書もバルザック研究者である訳者による注が詳細かつ丁寧にされていて、注を読むのも本書の楽しみのうちに入るのではないでしょうか。「金色の眼の娘」自体は、訳者がいうように「通俗的なオリエンタリズムあるいは東洋趣味の原色絵具をこてこてに厚塗りして描き上げた絵画と言えそうな中編小説」で、小説そのものの面白さの点では「人間喜劇」作品群の中だと大したことがないかなという印象です。2024/08/14
tyfk
7
「「総序」の次に『金色の眼の娘』の三つの章を置くと、全体は起承転結のある四部構成の読み物になりはしないか」p.2472024/08/18
Decoy
3
「総序」だけで文庫化とは、ありがたい。バルザックならではの力の入り具合に、早くも圧倒される。『金色の眼の娘』の方は、展開が速過ぎで、しかもラストが予想だにしない陰惨さで、「?!?!」ってなった…。『人間喜劇』を、死ぬまでにすべて読んでみたい(ようやく1割)。2024/08/12
斉藤達也
2
「人間喜劇総序」にはオルテガ・イ・ガセットの「大衆の反逆」を先取りするようなことが書かれているのが興味深い。「金色の眼の娘」は藤原書店の十三人組物語で一度読んでいる筈なのに何も覚えていなかった。実話に基づくというバルザック自身のコメントもあるが、バルザックの作品としては凡作だと思う。2024/08/12
KA
2
「近代文学の重要なマニフェスト」という売り文句にホイホイ釣られ、『ゴリオ爺さん』しか読んでいないのに「『人間喜劇』総序」を通勤電車内で読んだ。いやもうバルザック素晴らしすぎる。見事な知性、大きな野心、これしかない!という文章。『人間喜劇』読破したいなぁ2024/07/09