吉本隆明がぼくたちに遺したもの

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吉本隆明がぼくたちに遺したもの

  • 著者名:加藤典洋/高橋源一郎
  • 価格 ¥1,870(本体¥1,700)
  • 岩波書店(2024/07発売)
  • ポイント 17pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784000254649

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内容説明

吉本隆明――戦後思想史に屹立する彼の遺したことばと思想的営為は,ぼくたちになにを語りかけるのか.吉本隆明を敬愛してやまないふたりが,自身の受けた深甚なる影響について率直に語りあう.その思想的核心に迫る対論から,自分に発して世界の問題を考える思想的態度,その原型としての吉本思想が未来にもつ,驚くべき射程の広がりが明らかになる.

目次

まえがき   高橋源一郎
吉本隆明のことば   高橋源一郎
思想の「後ろ姿」/魂からうろこが落ちる/ことばの着地点/これは下手なんじゃないか?/受け渡しの問題/正しさとは何か/キーワードは「自由」/正しさと憂鬱/浄土はどこにあるのか/宗教のエコノミー/「異数の世界」はどこにあるのか
吉本隆明と3.11以後の思想   加藤典洋
思想から「国」を離隔すること――第一日目
はじめに――二つのモチーフ
1 世の大勢と違う発言をしたこと
異議申し立ての声/「戦後世代の政治思想」(1960年)/1960年以前の発言/『高村光太郎』(1957年)/「戦後文学は何処へ行ったか」(1957年)/「転向論」(1958年)
2 3.11以後に求められるもの
3 吉本隆明の反・反原発の主張と私にとっての3.11の意味
吉本隆明と「有限性の人類」――第二日目
はじめに――「世界との直取引」と「先端と始原の二方向性」
1 「先端と始原の二方向性」とは何か
1997年の発言から/起点としての『言語にとって美とはなにか』(1961-65年)/もう一つの起点としての『心的現象論序説』(1965-69年)/『母型論』(1995年)そして『アフリカ的段階について――史観の拡張』(1998年)
2 見田宗介と「軸の時代Ⅱ」
3 人類の有限性
ぼくたちに遺されたもの   加藤典洋×高橋源一郎
腑に落ちなければだめだ/吉本さんとの出会い/誤謬の人/別れの理由/肉体化された思想/発想の足場はどこにあるのか/戦争体験の受け止め方/戦後思想と根こぎの子たち/収まりの悪さの中で思想は生きていく/「近代」という尺度をはみ出して考える/異なった二つのメジャー/近代のはじまり,その核心/原発をどう考えるか/有限と無限/内在化された有限性にどう向き合うか/転移するまなざし/基軸としての吉本隆明
あとがき   加藤典洋

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

37
二人の吉本評は一致しています。高橋は、吉本が「正しさ」とは何かを突き詰めた思想家だといいます。加藤は、輸入学問で日本人を考えてきた日本において、吉本が世界のことを根源的に考えてきたはじめての思想家だといいます。ここには、社会的なメッセージとして意味あることの成否を問うているのでないことが分かります。二人にとって、結論が正しいことを超越して、同時代のその時点で粘り強く考えた吉本の態度こそが「正しい」と感じています。「吉本は無謬の人かと思っていたが、実は誤謬の人だった」、間違ったから今の吉本がある。2019/02/17

壱萬参仟縁

30
一見正しそうに見えるけれども、思想やことばを殺してしまうことになる。吉本さんは最初期から、その問題に取り組んでこられた(26頁)。吉本さんの本で、大学生の評判がよかったのは『吉本隆明が語る親鸞』だったという(28頁)。吉本さんは、ある意味で原発推進派(41頁)というのはよくない。思想家が死ぬと、思想はもう一度、生きはじめる(52頁)というのは、鶴見俊輔さんの作品を読み直すことで実感してみたい。戦後最初の単著は『高村光太郎』飯塚書店、1957年。完全に誤った高村を取り上げ、その淵源を極めた1冊(66頁)。2015/11/16

猫丸

12
殺人までもあえてする教団であるがゆえにオウム真理教は抹殺すべき対象であり、その教義に耳を傾けるのは時間の無駄である、との共通認識が社会を覆ったとき、吉本さんは「それは違う」と言った。「二度と悲惨な事件を起こさぬように」という理由など付けたら嘘になる。思想家としてオウムの教義自体に一縷の可能性を見たのだ。「そうは言っても社会規範の維持が優先だろ」という人には「何か浮かない気分」「そこはかとない居心地の悪さ」が感じられないのだろうか。であるなら、もはや吉本さんや僕と世界の捉え方がまったく違う。2024/08/14

amanon

4
以前から吉本隆明が「反反原発」の立場を表明しているということに納得がいかなかったが、本書を読んで、納得はできなかったが、ある程度理解はできた気がする。そして、本書の著者高橋、加藤両氏を初めとする所謂団塊世代にとって吉本がどれだけ大きな存在であったかということを改めて知らされた次第。世間で是とされている物に対して、あえてしかも断固として否を唱えるという吉本の姿勢は、時として愚直に映るのかも知れないが、しかし、そこにはある種の凛とした清々しさが感じられ、そこがファン心理をくすぐるのに違いない。2013/07/14

ひろゆき

3
著者二人より一世代下の私の世代では学生時代、吉本隆明はもう読まれなくなっていた。なによりもその後に吉本のオウム真理教への賛美、反核運動への罵倒などのとんでも論理の噴出。その稀少さ故にマスコミから多少は商品価値を持つものと位置づけられていたのが、さらに私の印象を悪くし、結果は迎合のみが目立つ、うさんくささしか感じなかった。第一印象は大事で、初めに眉をひそめたら恋も始まらない。吉本隆明にいわば恋した世代に私の蒙を啓いていただけたらと思ったが、ダメでしたね。2017/04/21

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