内容説明
止まらない少子化,児童虐待,精神疾患,そしてアディクション――現代社会が抱える問題の多くは,「家族」に由来している。なぜなら我々の暮らす地域社会や国家は,結局のところ「家族」を核として構成されるものだからである。
本書では,家族問題や依存症治療の第一人者であり,アダルト・チルドレンという概念を日本に広めたことでも知られる著者の貴重な論文の数々を,大幅な加筆修正を加えて再構成。ヒトの家族システムへのまなざしを軸に,「共依存」「児童期性的虐待と近親姦」「摂食障害」「男性のセクシュアリティと攻撃性」「嗜癖」といったテーマについて,詳細な事例も挙げながら論じていく。家族の問題に関心を持つすべての人に贈る一冊。
目次
第1章 「共依存」再考
第2章 日本の核家族と少子化――その特徴と精神医学的問題
第3章 解離性同一性障害と家族機能
第4章 児童期の虐待によるPTSDの治療
第5章 性的児童虐待と近親姦
第6章 少女の売春と近親姦
第7章 摂食障害者の家族と家族療法
第8章 近親姦虐待と成人期精神障害
第9章 男性のセクシュアリティと攻撃性
第10章 嗜癖(★ルビ:しへき)行動,その謎と解読
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
59
【世に蔓延する「健全家族万歳」という風潮に冷水を浴びせたかった】家族問題や依存症治療の第一人者が数年にわたって学会誌等に報告してきた論考を、加筆修正した選書。<この時代、われわれは「私」の欠損を埋めるためにアルコールや食物やセックスや人間関係や仕事や時代遅れの世界観に溺れて過ごした。1990年代以降、いよいよ激化した社会全体の嗜癖か(パラドクス化)の中でわれわれ個々に要請されているのは、「私」の現実を受け入れるとともに、パラドクスを選択肢に変える成長の可能性を信じることであるように思われる>と―― ⇒2025/02/04
たまきら
40
読み友さんの感想を読んで。著者が様々な雑誌に寄稿したものをまとめた一冊です。「家族」「共依存」「虐待」「嗜癖」といったキーワードを様々な症例とともに考察していく内容になっており、現在14歳の娘の行動に色々悩んでいる自分には考えさせられる内容でした。特に家族関係で起きる共依存や「優しい暴力」には自分の子ども時代を思い出しました。核家族化→少子化→地域社会におけるコミュニケーション不全…という図式は、家族の問題が数世代後には社会の機能低下につながるのだ、と気づかせてくれます。2025/06/22
カッパ
8
さらっとは目を通しましたがまだじっくり読むことができていません。ヒトは嗜癖するということでどちらかというと性被害や摂食障害とのかんけいなどを捉えなおしている本でした。事例は豊富なように感じます。2024/11/13