内容説明
1967年末。精神科医のジャックはワシントンDCの陸軍病院で、顔と両手を包帯で覆われた男と向かいあっていた。旧知のCIA幹部から、北極圏にある陸軍の極秘基地で発生した火災の調査を依頼されたのだ。発電室で出火し、2名が死亡。重度の火傷を負って昏睡から目覚めたコナーは、唯一の生き残りで、何が起きたのか思いだせないという。同じ火災現場で発見された遺体は、一方はかろうじて人間の形を残していたが、もう一方は灰と骨と歯の塊だった。なぜ遺体の状態にこのような差が出たのか? 幾多の謎と陰謀が渦巻く衝撃のミステリ長編!/解説=村上貴史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
401
レビューを拝見するとかなり高評価。実際、面白いのもたしか。ただ、ちょっと実力以上の採点がついている気もする。人物描写や会話のテンポがよく、新事実の小出しの仕方も上手で、ついつい先が気になって夜更かししてしまうほどではある。しかし、犯人の造形があまりに手垢まみれで、目新しい強烈な存在感が演出できていたとは言い難く、吹雪でいつお迎えがくるかわからない状況の中で、こんな博打みたいな犯罪に及ぶだけの、説得力ある理由がない点が、他の面は地に足のついた作風なだけ目について浮いている。自分としては中の上くらいの採点。2024/10/23
タツ フカガワ
129
米ソ冷戦中の1967年、極北グリーンランドの廃棄予定の米軍基地で火災が発生。2人が焼死、兵士コナーが両手と顔に大きな火傷を負う。CIAの依頼を受けて精神科医のジャックがコナーに事情を聞くが、覚えていないと言って口を閉ざす。スパイ小説仕立てのミステリーで、読み進むなかで「えっ?」という驚きが3~4回はあって読む手が止まらなかった。各登場人物のキャラクターも鮮やか、極北の厳しい自然の描写もいいし、周到な構成とテンポのよい語り口につい続編を期待してしまうほど面白かった。2024/11/13
ちょろこ
123
多々やられた一冊。唸りがいがある面白さ。時は1967年。極寒の米国陸軍極秘基地で発生した火災の真相を精神科医が探るストーリー。重度の火傷を負った記憶障害の生存者からの情報収集。その拭えない違和感。次々と精神科医ジャックを取り巻く謎と危険にリードされる時間がたまらない。まず一発目からまんまとやられた。たしかに重要な伏線があったことに気づいた。そこからもまだまだ待ち受ける飽きさせない展開がいい。ジャックのタフさ、そして何より良くも悪くも人の思いの強さにやられた。極夜が謎を隠した極上のミステリはラストまで満足。2025/03/25
Apple
120
主人公が良かった。従軍経験から戦闘能力を有しており、また現役の精神科医として心理分析•アプローチの手法も心得ている主人公ジャックが、北極の観測所における幽閉の中発生した不可解な事件を、鋭く滑らかに解決していくような展開が爽快でした。あまり背景設定が小難しくなくて、楽しめました。最終盤では舞台を変え、極夜の中での希望が開けるようなクライマックスでした。2024/09/16
ナミのママ
113
年間ベスト10入り。1967年グリーンランドの米軍極秘基地、撤退が決まり残っていた最後の3人が火災に巻き込まれた。CIAから依頼された精神科医のジャックは、1人生き残った重度火傷の患者から事情を聴き始める。作中の「このたわごとは、かき分けてもかき分けても、なお深みにはまっていくな」の言葉がまさにピッタリ!ジャックの頭脳とフットワークの軽さが魅力だが真相にはなかなかたどり着かない。だがベールが剥がされるにつれ、確かに伏線はあったと気付かされる。一気読みおすすめの作品。2024/09/02




