内容説明
第四回創元SF短編賞を受賞した表題作をはじめ書き下ろし一編を含む五編を収録。人類の存続を賭けて別の銀河をめざす、人格を持った宇宙船たちを襲う試練(銀河風帆走)、地球に衝突するコースをとった小惑星の軌道をそらす計画に挑む高校生たち(もしもぼくらが生まれていたら)、史上初の恒星間宇宙船同士による“一騎討ち”の行方(星海に没す)……ハードSFの俊英が放つ、瑞々しい感性に満ちた第一短編集。【目次】「もしもぼくらが生まれていたら」地球に衝突する小惑星の軌道を逸らす計画に挑む高校生たち/「されど星は流れる」パンデミックの最中に系外流星を観測しようとする天文部の挑戦/「冬にあらがう」破局的噴火がもたらす食料枯渇に化学部の二人+AIが立ち向かう/「星海に没す」(書き下ろし)史上初の恒星間宇宙船同士による“一騎討ち”の行方/「銀河風帆走」(第4回創元SF短編賞受賞作)人類の存続を賭けて別の銀河をめざす宇宙船たちを襲う試練/解説=鈴木力
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
129
長編の一部を切り出した風の短編5作を収録。生きるのも困難な状況に追い込まれた高校生や超知能AIが、考えに考え抜いて自分のやれることに必死で挑む姿を描いていく。しかし、いずれもハードSF的な展開を期待させながら、どの作品もストーリーは尻切れトンボになり明確なラストを提示しない。伏線の回収やカタルシスなど知るかという態度だが、あえて読者の想像に結末を委ねるオープンエンドを採用することで容赦ないリアルを暗示するようで読後感が重い。特に「星界に没す」と「銀河風帆走」は、宗教者が解脱を迎えた瞬間を捉えたかのようだ。2024/09/25
ひさか
38
19年10月創元SF文庫刊空を数える:もしもぼくらが生まれていたら、20年8月東京創元社刊Genesisされど星は流れる、23年8月紙魚の手帖vol.12刊冬にあらがう、書き下ろし:星海に没す、13年6月創元SF文庫刊極光星群:銀河風帆走、の5つのSF短編集。2024年8月東京創元社刊。もしも〜、されど〜、冬に〜、の3編は、学生達が問題を解決していく話で、問題の設定とその解決過程がとても楽しく、ダイナミックで、緊張感かある。星海〜、銀河風〜は主人公のAIの思考、決断がいずれも圧巻。全ての出来が良い。2025/02/28
rosetta
34
★★★★☆2013年に表題作で第4回創元SF短編賞を受賞した作者の小説単著デビュー作。ガチガチのハードSFなんだけど、最初の3編は高校生が主人公のせいもあってか変に難しい言葉を濫発することもなく読みやすく、中高レベルの理科の知識でも理解しやすい。理系の部活動で地球に衝突する小惑星の軌道修正を図ったり、パンデミック下で顔を合わせられない機会に流星の観測をしたり、火山の冬に人類を救うためセルロースから糖を抽出したり。残り二篇の宇宙物でもAIが活躍。爽やかさと切なさと知的興奮と、ぜひもっとたくさん書いて欲しい2024/09/30
塩崎ツトム
25
巨大プロジェクトの結果としての表題作や宇宙艦隊戦を描く作品から、そこへ行きつくまでの、最初の「大河の一滴」となるかもしれない科学少年少女たち。二つのコントラストがまぶしい。2024/12/28
ケンケン
22
(690冊目)【ベストSF 2024[国内篇]第4位&第45回日本SF大賞・特別賞】これは、期待以上に面白かった! 各作品と通して、それぞれの希望を捨てない姿や科学への思いが感じられて、大変良い短編集でした。『もしもぼくらが生まれていたら」と「銀河風帆走」が特に良かった。2025/03/01