内容説明
「日本外交の父」が辿った波瀾万丈の若き日々。幕末維新史を一新する「19世紀クロニクル」
明敏な知性が、野望に心を奪われる時――師・坂本龍馬と目指した新たな国家像、理念と実践の狭間で犯した愚状とは
陸奥は紀州藩で重用された父の失脚により所払いとなり、高野山の学僧から身を起こそうと、尊皇攘夷の嵐の中、洋学を志す。勝海舟の海軍塾に学び、坂本龍馬の海援隊へ。薩長連合を実現させた龍馬の許で、桂小五郎、後藤象二郎らに接近。若き日の伊藤博文、アーネスト・サトウらと心を通わせる。しかし維新後、陸奥は新政府内で苦境に立つ。時代の流れは、龍馬が構想した世界とは違う方向に進んでいる。薩摩で西郷が蜂起し、これを千載一遇の好機と捉えた陸奥は、身の破滅に向かって最初の一歩を踏み出した……。
目次
序
第一部
第二部
第三部
エピローグ 陸奥小伝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
93
辻原さんの日経新聞に連載されていた伝記小説です。辻原さんは以前にも日経新聞に「発熱」という小説を連載されていましたが、この小説と同じような教養小説でわたしはモンテスキューの「ペルシャ人の手紙」やチマローザのピアノ音楽を知ることができました。この小説では陸奥宗光の幼少期と山形監獄などにとらわれていることが中心に描かれていて、その時にはベンサムの著作を訳したということで佐藤優さんを思い起こしました。私も既読の萩原延寿の「遠い崖」や大佛次郎の「天皇の世紀」を参照されていたようです。2025/02/25
kawa
31
日経新聞掲載時(2023年3月1日~24年1月31日)読了。陸奥の青春が興味深い。掲載時に彼の出身地の和歌山を訪れ和歌山城などを見学し幕末の紀州藩の動きを学習できたのも本書との関連で良かった。機会があれば単行本で再読したい。また印象が変わる予感あり。2024/11/10
kk
23
図書館本。陸奥宗光。のちに日清戦争をめぐる外交交渉や不平等条約改正等で名を馳せ、日本リアリズム外交の創造者として青史に大きな足跡を遺す一大奇人。本書は、この男の前半生にフォーカスした歴史小説。坂本龍馬らとの邂逅やエスタブリッシュメントへの反発の中、紀州出身の青年が立憲君主政体による民主制確立の夢を抱き、その志の実現と己の栄達に向けて羽ばたこうとしながら、時代の大きなうねりの中、夢破れて囹圄に呻吟するに至る足取りを描く。陸奥という極めて複雑な人格の拠って來るところを見事に剔出。読み応えあり。2025/03/20
naok1118
4
かなり長い小説だ。始めのうちは幼少期から書き出されるのであるが、正直長くてつまらないと思っていた。ところが、坂本龍馬登場から俄然面白くなる。小説もここから始めて幼少期は回想シーンで良かったかもと思う。龍馬登場以降は本当に面白かったよ。2025/01/15
chuji
4
久喜市立中央図書館の本。2024年7月初版。初出「日本経済新聞朝刊」2023年3月1日~24年1月31日。剃刀大臣陸奥宗光前日譚。かなり分厚い本を読了して、陸奥さん余り好きな人物ではありませんでした。2024/11/05