内容説明
1893年の万博開催間近のシカゴ。夢の祭典に邁進する建築家、難航する資金集め、襲いかかる嵐や火災、そして人知れず「殺人ホテル」を作り上げ、おぞましい猟奇犯罪を重ねる連続殺人犯……。新興国アメリカの光と闇を描き切った、エドガー賞受賞の傑作ノンフィクション『悪魔と博覧会』、待望の復刊文庫化。解説/巽孝之
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
121
アメリカ連続殺人史でH・H・ホームズは有名だが、彼が殺しを重ねていた19世紀末のシカゴでは万博開催の準備が進んでいた。国と市の威信をかけた万博成功のため政治家や建築家が必死に努力する一方で、殺人を趣味とする男が何の咎めも受けず女を殺し続けたのだ。両者は全く無関係だったが、あまりに落差の激しい光と影のコントラストが同時進行していた現実には思わずめまいがする。その後のアメリカ史においてシカゴ万博は美しく装われた表の象徴であり、ホームズの犯罪は暗い闇の水脈を生み出した。正常と狂気が同居する国の根源を見た思いだ。2024/08/24
maja
23
1893年、食肉産業の都市で知られるシカゴで大規模な万国博覧会が開催された。開催地誘致から開催決定、ハレの日に向かい準備するバーナムを始めとする様々な関係者たちの混沌。時を同じくしてシカゴに降り立つ若い医者。建設ラッシュに沸き、大勢の人々が引き寄せられてくる19世紀末当地の光と闇が交錯するノンフィクションでようやく読み終えた。博覧会場の建設から開催、そして関わった建築家たちのその後が丹念に描かれる。並行するH.H.ホームズ事件と顛末。ホームズの異様さが怖ろしかった。2024/11/27
Porco
22
よく聞くフレーズで「誰だって、自分の人生という物語の主人公なんだ」というものがあるが、これは言い変えれば「誰だって、誰かの人生という物語の出演者なんだ」ということである。本作はあくまで万博を作り上げたダニエルやシリアルキラーホームズが主役であるが、名もなき建設労働者や若く全能感に満ち溢れた乙女たちなど数多の人が入り混じり、万博という熱狂の坩堝で動く主役たちの物語で編まれたシカゴの町は、それを俯瞰している神の視点である読者から見ても、題名の割にショッキングな描写が薄くても熱を感じてしまうものだった。2024/09/04
ももいろ☆モンゴリラン
5
「間に合わない」「余計な横やり入れやがって」「足りない」「想像と違う」「開会式明日ってマ?」「市長ォ!!」「節約して」「だ か ら 黙 っ て ろ っ て ! !」現代の世界規模のイベント責任者たちの嘆きかと思えば、どっこい100年以上前から響いてきた。景観設計のオームステッドがなんと可哀想なことか(植えた端から踏みつけられる)…。並行して暗躍するH・H・ホームズのサイコパス殺人紀行もどんどん箍が外れていって、異なるストレスを同時に味わえる誠に稀有な作品となっております。2024/07/24
劇団SF喫茶 週末営業
4
1893年のシカゴ万博は後の都市計画やテーマパーク設計に影響を与えたようだ。アメリカの威信をかけたこの万博をわずか2年で設計、建築することになった建築家バーナム。その奮闘が無茶振りお仕事モノとして面白い。さらに同じ頃、万博の近くにはアメリカ最初の連続殺人鬼HHホームズが潜んでおり、、、とあれば、読む前は大傑作の予感しかなかったが案外そうでもなかった。二つの話は全然交わらないからだ。しかし、建築家と殺人鬼を相似形として描いており、万博と連続殺人が共通の時代精神から来るものだという感じにしたかったのだろう。2025/05/27
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