内容説明
1945年、日本占領下のマラヤでは少年たちが次々と姿を消し始める……。日本軍のスパイに協力した主婦セシリーと、その家族に起こった数々の悲劇を圧倒的な筆力で描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
39
歴史上ずっと勝者であれば、文句なしに英雄視されたであろうが、太平洋戦争において、敗者であり侵略者である日本人を魅力的に描くのは、長い間文学の世界で禁忌だった。しかし最近になって『夕霧花園』のような作品も登場してきた。太平洋戦争前に起こった「アジア人のためのアジアを作ろう」という大東亜共栄圏構想は、それなりに支持する者もいた。しかし日本は欧米の軛から外した後、それらの国の支配を狙っており、最終目的が植民地化に過ぎないという意見もある。本編では、戦争の最中、アジアの盟主日本に惹かれた人たちが描かれる。2024/08/14
ori
15
日本占領下のマレーシア(当時はマラヤ)で、日本人スパイを好きになった女性セシリーが彼に協力する。その後彼女や家族に起こる様々を描く小説。戦争下という極限の環境で起こる人間の感情や追い込まれた時の行動が生々しい。これは現在もウクライナやガザで起こっていることでもある。セシリーや彼女の娘達目線からのフェニミズムやシスターフッド要素もある家族の大河ドラマでもある。当時の日本軍について、またマレーシアへの理解を深めるあとがきの解説もとても良かった。2025/03/16
グルラビ
6
日本占領下のマレーシアのある家族の小説。1930年代のイギリス統治下、1945年の日本統治下と時代を行き来して物語が進む。占領下の生活の悲惨さ、残酷さ、絶望感が生々しい一方で、物語としての仕掛けも素晴らしく、ページを繰る手が止まらなかった。日本軍の残虐性に目を背けたくなるが、史実や時系列はともかく、ある程度これに近い事はあっただろうと想像できる。歴史修正主義者はこの手の本は気に入らないだろう。女性目線の様々な描写は、戦争文学であるだけでなくフェミニズムの要素も感じられる。息をもつかせず読ませる力作。2024/08/07
W
5
2024年から刊行された〈アジア文芸ライブラリー〉の第3弾。第二次世界大戦以前のマラヤ(現マレーシア)を舞台に、英国支配下の過去と、日本占領下の現在を行き来しながら物語が進む。 日本人スパイのフジワラと、彼の思想に惹かれて自発的に協力する現地人主人公セシリーの関係は、侵略の記憶をロマンス色の強い物語として再構成しており、それは物語の牽引力にはなっているものの、「わたしたち」の自発性に焦点をあてた結果、なんだか侵略国日本の責任を肩代わり?分散?させているような、苦々しい感情を抱いた。2026/06/14
伊戸
3
我々の住む日本という国が他国であるマラヤという土地にどのように介入し、どのような影響と人々の人生を生み出してしまったかを痛切に感じた。 社会問題としてあげられる戦争の爪痕をこんなにもリアリティを持って想像したことは無かった。2025/01/05
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